アミノ酸系の洗浄成分で、と伝えて上がってきた試作が思ったより泡立たない。シャンプーのOEMでよく起きるすれ違いです。アミノ酸シャンプーのOEMとは、アミノ酸系の洗浄成分を主剤に据えたシャンプーの製造をメーカーに委託する仕組みを指します。ただし、この呼称に法的な定義はなく、何%配合すればアミノ酸シャンプーと名乗れるという基準も存在しません。だからこそ、洗浄主剤に何を据えるかは発注側が仕様として決める項目になります。この一項目を決めないまま進めると、泡立ちと洗い上がりのどちらを取るかの判断が試作の現場に残ります。
この記事の要点
アミノ酸シャンプーに法的な定義や配合率の基準はありません。洗浄主剤に何を据え、補助剤をどう組むかで設計が決まります。
この記事でわかること
- アミノ酸シャンプーという呼称に基準がないことと、仕様側で決めるべき項目
- 全成分表示の並び順から洗浄主剤を読み取る方法
- アミノ酸系・ベタイン系・高級アルコール系それぞれが担う役割
- アミノ酸系の中でもグルタミン酸系・アラニン系・グリシン系で挙動が変わる理由
- 低刺激をうたう際に根拠が必要になる理由と、書ける表現の範囲
アミノ酸シャンプーに法的な定義はない
アミノ酸シャンプーという言葉は市場で広く使われていますが、制度上の裏付けを持つ用語ではありません。
呼称の基準がないから仕様側で決める
薬機法にも業界の公正競争規約にも、アミノ酸シャンプーを定義する条文はありません。配合率が何%以上ならアミノ酸系と名乗れるという基準も存在しないため、同じ呼称の製品でも中身は大きく違います。
アミノ酸系を微量だけ配合し、洗浄の実質を高級アルコール系が担っている製品もあります。呼称だけでは判別できないという構造です。
発注する側から見ると、これは制約ではなく決定権のある項目です。洗浄主剤に何を据えるか、補助剤との比率をどう置くかを仕様として指定すれば、意図した配合になります。逆に「アミノ酸系で」とだけ伝えると、解釈の幅がそのまま試作のばらつきになります。
全成分表示の並び順で洗浄主剤が読める

参考にしたい市販品がある場合、全成分表示から洗浄主剤を推定できます。化粧品の成分表示には記載順序の決まりがあるためです。
成分名の記載順序は、製品における分量の多い順に記載する。ただし、1%以下の成分及び着色剤については互いに順不同に記載して差し支えない。
出典:厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬監麻発第220号・医薬審発第163号)
シャンプーは水が最も多いため、表示の先頭は水になります。その次に現れる洗浄成分が、実質的な主剤と考えられます。アミノ酸系の成分名が末尾近くにあれば、配合量は1%以下の可能性が高い並びです。
ただし読み取りには限界があります。1%以下の成分は順不同で記載してよいため、後半の並びから配合量を推定することはできません。あくまで主剤の見当をつけるための手がかりという位置づけです。
洗浄成分は3系統の組み合わせで決まる

シャンプーの洗浄成分は、単一の界面活性剤で組むことはまれです。役割の違う系統を組み合わせ、その比率で洗い上がりを作ります。
アミノ酸系:弱酸性で泡立ちは穏やか
アミノ酸系は、脂肪酸とアミノ酸を結合させた構造を持つ洗浄成分です。ココイルグルタミン酸Naやラウロイルメチルアラニンナトリウムが代表的な成分にあたります。
弱酸性域で組みやすく、洗い上がりはしっとりした方向に出ます。一方で泡立ちは穏やかで、洗浄力も高級アルコール系に比べると控えめです。この穏やかさが、処方を組むうえでは起泡性の課題として現れます。
ベタイン系:増泡と補助を担う両性
ベタイン系は両性界面活性剤に分類され、コカミドプロピルベタインが広く使われています。単独で主剤に据えることはまれで、他の洗浄成分と組み合わせて使います。
役割は泡質の調整と増泡です。アミノ酸系だけでは物足りない泡立ちを補い、泡のきめを整えます。洗浄の中心を担うのではなく、主剤の弱点を埋める補助という位置づけ。
高級アルコール系:起泡性と洗浄力
高級アルコール系は硫酸エステル塩に分類され、ラウレス硫酸Naが代表格です。泡立ちがよく洗浄力も高いため、整髪料を使う頭髪やスタイリング剤の洗浄を想定する処方で選択肢に入ります。
アミノ酸シャンプーとして企画する場合、この系統を主剤には据えません。少量を組み合わせて起泡性を補うか、まったく使わないかの判断になります。
アミノ酸系の中でも挙動が分かれる
アミノ酸系をひとつの塊として扱うと、試作の方向を見誤ります。結合しているアミノ酸の種類によって、泡立ちと洗い上がりが変わるためです。
| 系統 | 泡立ち | 洗浄力 | 洗い上がりの傾向 |
|---|---|---|---|
| グルタミン酸系 | 穏やか | 穏やか | しっとり・重め |
| アラニン系 | 中程度 | 中程度 | すっきり・中間 |
| グリシン系 | 立ちやすい | やや高め | さっぱり・きしみが出やすい |
| タウリン系 | 中程度 | 中程度 | なめらか |
しっとりを狙うならグルタミン酸系、泡立ちとのバランスを取るならアラニン系、さっぱり感を出すならグリシン系という組み立てが基本です。単一で使い切らず、複数を組み合わせて中間の質感を作ることも一般的です。
シャンプーのOEM全般で発注者が決められる範囲は、シャンプーのOEMで選べる範囲で整理しています。容器や香りを含めた全体の進め方はそちらを参照してください。
起泡性と洗浄力はトレードオフになる

アミノ酸シャンプーの処方で最初にぶつかるのが泡の問題です。穏やかな洗浄成分を選ぶほど、泡は立ちにくくなります。
アミノ酸系単独では泡が立ちにくい
アミノ酸系を主剤に据え、補助剤を入れずに組むと、泡量は市販の一般的なシャンプーより明らかに少なくなります。洗浄成分の性質から来る挙動で、配合量を増やしても解決しません。
使う側の体験としては、泡立たない製品は「洗えていない」という印象につながります。実際の洗浄性能とは別に、泡は使用感の評価を左右する要素。この乖離が、試作段階でのすれ違いの主な原因になります。
補助剤で泡を組み立てる
泡量を確保する方向は複数あります。ベタイン系を組み合わせて増泡するのが基本で、起泡助剤を併用する方法も取られます。
| 打ち手 | 効果 | 留意点 |
|---|---|---|
| ベタイン系の併用 | 泡量と泡質を底上げ | 比率を上げすぎると洗い上がりが変わる |
| 起泡助剤の併用 | 泡のきめと持続を改善 | 配合設計が複雑になる |
| 高級アルコール系を少量 | 起泡性を確実に確保 | アミノ酸系主剤という設計思想と折り合いを付ける |
| 2度洗いを前提にする | 1度目で汚れを落とす | 使用方法として明示が要る |
どの方向を選ぶかは、ブランドとして何を優先するかで決まります。泡立ちを重視するのか、洗浄成分の構成そのものを訴求の軸に置くのかを先に決めておくと、試作の評価基準が定まります。
使用場面で必要な泡量が変わる
必要な泡量は使う場面によって違います。同じ処方でも評価が分かれる部分です。
サロンでの施術は、シャンプー台で美容師が洗う前提です。泡量が少なくても手技で補える環境のため、洗い上がりの質感を優先した設計が成立します。家庭で自分で洗う製品では、泡立ちの体験そのものが評価に直結します。
想定する使用場面を先に共有しておくと、試作の方向が絞れます。サロン向けの製品設計についてはヘアサロンのヘアケアOEMで扱っています。
洗浄成分の訴求で起きる表現の問題

アミノ酸シャンプーは低刺激やマイルドといった訴求と結び付けて語られがちな領域です。ただし、書ける範囲は化粧品の枠組みで決まります。
「低刺激」「やさしい」は根拠が要る
条件を付けずに「低刺激」「頭皮にやさしい」と書く形は避けます。安全性を保証する表現にあたり、薬機法と景品表示法の両面でリスクを伴うためです。
書けるのは、実施した試験の事実とその結果に限られます。
| 表現を避けたい形 | 適切な形 |
|---|---|
| アミノ酸系だから低刺激 | アミノ酸系洗浄成分を主剤に使用(配合の事実) |
| 頭皮にやさしい | (安全性を保証する表現は標榜できない) |
| 敏感肌の方も安心 | (標榜できないため試験結果の記載に留める) |
| 刺激ゼロ/無添加 | ○○不使用(不使用の成分を明示する) |
成分の構造や由来を説明することと、その成分が肌に対して安全だと断定することの間には線があります。事実として書けるのは前者です。
成分の性質と製品の効能は別
化粧品が標榜できる効能は、厚生労働省が定める56項目に限られます。このうち毛髪・頭皮に関するものは16項目で、シャンプーの訴求はこの範囲から選びます。
洗浄成分を変えても、書ける効能の範囲は広がりません。アミノ酸系を主剤にしたからといって、頭皮トラブルの改善やダメージの修復を書けるようにはならないという整理です。
「修復」「改善」は16項目に含まれない語で、髪や頭皮が元の状態に戻ると読めるため、そのまま使うと医薬品的な効能の標榜と受け取られる余地があります。「補修」は扱いが別で、業界のガイドラインは、頭髪用の化粧品について、補修成分で髪の表面を覆うといった物理的な補修の表現を、事実であり効果が使っている間に限られることを条件に認めています。ただし、洗浄成分をアミノ酸系にしたこと自体は補修の根拠になりません。シャンプーで書ける具体的な効能表示の範囲はシャンプーのOEMで選べる範囲で詳しく扱っています。
なお育毛・発毛に関する表現は、化粧品のシャンプーでは扱えません。育毛剤や薬用スカルプ製品は医薬部外品の区分にあたり、承認を受けた品目だけが該当する効能を表示できます。区分の違いは医薬部外品と化粧品の違いで整理しています。
ロット・納期と相談前の準備
処方の方向が決まったら、ロットと納期の検討に移ります。区分によって条件が変わる点に留意します。
化粧品区分のシャンプーなら100個程度から
アミノ酸シャンプーは化粧品区分のヘアケアに該当します。化粧品区分のヘアケアに限り、100個程度からの相談を受け付けています。この条件であれば、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。
この条件は薬用シャンプーには適用されません。有効成分を配合して医薬部外品として承認を受ける製品は、承認・許可の工程が入るため、ロットも期間も個別の判断になります。
| 区分 | 対象 | 最低ロットの目安 | 納期の目安 |
|---|---|---|---|
| 化粧品ヘアケア | アミノ酸シャンプー・一般のシャンプー | 100個〜 | 最短約1ヶ月〜 |
| 医薬部外品 | 薬用シャンプー・薬用スカルプ製品・育毛剤 | 仕様により個別 | 承認・許可工程の分だけ長い |
| 一般OEMロット | メイクアップ・脱毛ワックス・食品系 | 1,000個〜 | 約3ヶ月 |
費用は洗浄成分の構成・容器・容量・ロット数の組み合わせで変わります。仕様が固まる前は幅のある概算になるため、条件を整理したうえで個別にお見積もりする流れです。
相談前に決めておく処方側の項目
洗浄成分の設計に関して、次の3点に見当がついていると試作の往復が減ります。
- 洗浄主剤の系統(グルタミン酸系・アラニン系・グリシン系のいずれを軸にするか)
- 泡量の優先度(泡立ちを取るか、洗い上がりの質感を取るか)
- 高級アルコール系の可否(少量の併用を認めるか、完全に外すか)
質感と泡の希望は、言葉より現物のほうが正確に伝わります。参考にしたい市販品があれば全成分表示とあわせて提示いただくと、洗浄主剤の見当が付いた状態で試作に入れます。インバス・アウトバスの製品とライン展開する場合はヘアトリートメントのOEM、洗い流さない仕上げ剤はヘアオイルのOEMもあわせてご確認ください。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法) | 化粧品・医薬部外品の区分と製造販売の根拠法 |
| 化粧品の全成分表示の表示方法等について(医薬監麻発第220号・医薬審発第163号) | 全成分表示の記載順序を定めた通知 |
| 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号) | 化粧品が標榜できる56項目の根拠通知 |
| 医薬品等適正広告基準(薬生発0929第4号) | 効能表現の広告上の適否を判断する基準 |
| 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法) | 品質・取引条件の不当表示に関する規制 |
| 化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版(日本化粧品工業連合会) | 頭髪用化粧品の補修表現の範囲(業界の自主基準) |
まとめ
アミノ酸シャンプーという呼称に法的な定義はなく、配合率の基準もありません。同じ呼び名でも中身の設計は幅があるため、洗浄主剤に何を据えるかは発注側が仕様として指定する項目になります。
洗浄成分はアミノ酸系・ベタイン系・高級アルコール系の3系統から組み合わせます。アミノ酸系は弱酸性で洗い上がりが穏やかな一方、泡立ちは控えめです。ベタイン系で増泡し、必要に応じて起泡助剤を併用するのが基本の組み立てになります。アミノ酸系の中でも、グルタミン酸系・アラニン系・グリシン系で泡立ちと質感が変わります。
訴求の面では、成分の性質と製品の効能を分けて考えます。洗浄成分を変えても書ける効能は16項目の範囲にとどまり、条件を付けない「低刺激」は安全性の保証表現にあたります。化粧品区分のシャンプーであれば、100個程度からのご相談が可能です。
よくある質問
アミノ酸シャンプーと名乗るのに必要な配合率はありますか
法令にも業界の規約にも基準はありません。何%配合すればアミノ酸シャンプーと呼べるという線引きは存在しないのが現状です。
基準がないぶん、洗浄主剤の系統と配合の考え方を発注側で指定する形になります。仕様として明示しておくと、試作の方向がぶれず、後から製品説明を書く際の根拠も整理しやすくなります。
アミノ酸系だけで処方すると泡は立ちませんか
まったく立たないわけではありませんが、市販の一般的なシャンプーと比べると泡量は明らかに少なくなります。洗浄成分の性質による挙動のため、配合量を増やしても解決しません。
泡量を確保する場合はベタイン系の併用が基本です。起泡助剤を組み合わせる方法もあります。泡立ちと洗い上がりのどちらを優先するかを先に決めておくと、試作の評価がしやすくなります。
高級アルコール系を少量だけ使うのは避けるべきですか
処方としては成立します。起泡性を確実に確保したい場合、少量の併用は現実的な選択肢です。
判断はブランドの訴求方針によります。洗浄成分の構成そのものを訴求の軸に置くなら外す設計になりますし、使用感を優先するなら併用が合理的です。どちらを取るかを先に決めておくと、処方の方向が定まります。
パッケージに低刺激と書けますか
条件を付けずに書く形は避けます。安全性を保証する表現にあたるため、薬機法と景品表示法の両面でリスクを伴うためです。
書けるのは実施した試験の事実とその結果に限られます。成分について書く場合は「アミノ酸系洗浄成分を主剤に使用」のように、配合の事実として記載する形にします。表現の可否に迷う箇所は仕様確定の前にご相談ください。
アミノ酸シャンプーは何個から作れますか
化粧品区分のヘアケアに該当するため、100個程度からのご相談をお受けしています。この条件であれば最短約1ヶ月程度での納品が可能です。
薬用シャンプーとして医薬部外品の承認を受ける場合、この条件は適用されません。承認・許可の工程が入るため、ロットも期間も個別の判断になります。企画の段階でどちらの区分で進めるかを決めておくと、計画が立てやすくなります。
参考にしたい市販品の処方は再現できますか
同一の処方をそのまま複製することはできません。他社製品の処方は開示されていないためです。
ただし全成分表示から洗浄主剤の系統は推定できます。目指す方向を共有する材料としては有効なので、参考品がある場合は現物か全成分表示をご提示ください。そこから狙う質感に近い構成を組み立てる進め方になります。

