100個で香水を作りたいと伝えたところ、容器の話で止まってしまった。香水OEMの小ロットでは、この止まり方がよく起きます。理由は中身ではなく瓶詰めの工程にあります。市販の香水はスプレー部分を金属で圧着する「カシメ式」が主流で、この加工には専用の機械が要ります。設備を持つ工場が限られるため、少量の相談は通りにくくなります。ネジ式のボトルを選べば対応できる工場は広がりますが、密閉性では劣ります。どちらを選ぶかが、100個で作れるかどうかと仕上がりの両方を左右します。

この記事の要点

香水OEMの小ロットは、ボトルをカシメ式とネジ式のどちらにするかで可否が変わります。ネジ式と既製ボトルを組み合わせれば、化粧品区分のフレグランスは100個から相談できます。

この記事でわかること

  • カシメ式とネジ式の構造の違いと、小ロットでの現実的な選び方
  • 香水の充填に化粧品製造業の許可と危険物の設備が要る理由
  • 賦香率で分かれる4種類と、容量ごとの考え方
  • 既存香料とオリジナル調香で費用と期間がどう変わるか
  • 相談する前に決めておく項目

香水の小ロットを難しくしているのは中身ではなく瓶詰め

香水の小ロットを難しくしているのは中身ではなく瓶詰め|図解

香りそのものは、既存の香料をベースにすれば短期間で決まります。詰まるのはその先の充填工程です。重なっているのは機械、法規、資材という3つの制約。

スプレーのカシメ加工には専用の機械が要る

化粧水のようにキャップを回して閉めるネジ式と違い、市販の香水の多くは金属でボトルの口を圧着して密閉します。これがカシメ式です。

圧着してしまうと開封できなくなるため、液漏れと異物の混入を防げます。その代わり、カシメ機という専用の機械が必要になります。しかもボトルの口径は13mmや15mmといった規格に分かれており、機械はミリ単位で合わせ込まなければなりません。手作業や簡易な設備での対応は困難です。

この機械を持っているかどうかが、小ロットの相談を受けられるかの分かれ目になります。空圧式のカシメ機とスクリュータイプの両方を備えた工場もあり、設備さえあれば少量でも対応できます。ただしそうした工場は多くありません。

エタノールが消防法の危険物にあたる

香水は成分の大半がエタノールです。濃度が60%以上になると、消防法上は第4類の引火性液体、なかでもアルコール類に区分されます。

この記事の要点

アルコール類の指定数量は400リットルです。

出典:総務省消防庁

指定数量を超えて扱うには、危険物取扱いの届出と設備が要ります。防爆仕様の充填ラインを持たない工場では、そもそも香水の充填ができません。化粧水やクリームを作れる工場が香水も作れるとは限らない理由がここにあります。

肌につける香水は化粧品なので許可のある工場でしか充填できない

香水は薬機法上の化粧品です。肌につけることを前提にした製品を瓶詰めする行為は製造にあたるため、化粧品製造業の許可を持つ工場でなければ行えません。

自宅やレンタルスペースで小分けして販売する形は、この点で成立しません。香料を仕入れて自分で詰めるという発想は、法規の側で止まります。前提になるのは、許可を持つ工場への委託。

ガラス瓶の個体差が不良につながる

香水瓶はデザイン性を優先して海外製を選ぶケースが目立ちます。ここに落とし穴があります。

海外製のガラス瓶は、口元のサイズや肉厚にコンマ数ミリの個体差が出ることがあります。サイズがばらつくと充填機がボトルを正しく検知できず、カシメる段階でガラスが割れる事故も起きます。透明な瓶が多いことも検品を厳しくします。チリや繊維がわずかに混ざるだけで一目でわかるため、泡立ちを抑えながら正確に充填する必要があります。ガラスの厚みにムラがあると、同じ量を入れても液面の高さが揃わず、不良品に見えてしまいます。

カシメ式とネジ式のどちらを選ぶかで対応できる工場が変わる

カシメ式とネジ式のどちらを選ぶかで対応できる工場が変わる|図解

ボトルの方式は仕上がりの印象と製造の難易度を同時に決めます。どちらが正解というものではなく、優先するものが違うだけです。

カシメ式は密閉性が高いが対応できる工場が限られる

店頭で見慣れた香水は、ほとんどがカシメ式です。ノズルの根元に金属のリングがあり、指で回しても外れません。

密閉性はこの方式が上です。エタノールは揮発しやすいため、隙間があると香りが飛び、液も漏れます。圧着してしまえばその経路がなくなります。読者が「香水らしい」と感じる質感は、この構造から来ています。制約は前述のとおりで、機械を持つ工場を探すところから始まります。

ネジ式は対応できる工場が広がるが締め加減にムラが出る

ネジ式は溝をかみ合わせて締める方式です。カシメ機を使わずに済むため、対応できる工場の数が一気に増えます。

弱点も明確です。締める力の加減を揃えることが難しく、個体ごとにばらつきます。開け閉めを繰り返すとアルミ製のネジ山に変形が生じ、密閉性が落ちていきます。インナーキャップ付きのボトルを選べば揮発と液漏れをある程度抑えられるため、小ロットではこの組み合わせが現実的な着地点になります。詰め替えや分別廃棄がしやすいという利点もあり、環境配慮を打ち出すブランドでは長所として説明できます。

カシメ式ネジ式
密閉圧着するため隙間が出ない締め加減にムラが出る
開封できないできる(詰め替え可)
設備カシメ機が要る簡易ラインでも対応できる
対応工場限られる広い
小ロット設備のある工場に限られる選択肢が多い

既製ボトルを使えば割れと液漏れのリスクが下がる

自分で海外からボトルを取り寄せて支給する方法は、費用を抑えられるように見えます。実際には逆に振れることが多くあります。

支給資材は個体差の責任が発注側に残ります。割れや充填不良が出ても、工場側は資材の品質を保証できません。デザインだけで海外のボトルを決めると、口元の寸法が充填ラインに合わずに選び直しとなり、納期も後ろへずれます。メーカーが繰り返し使っている既製ボトルを選べば、機械の調整が済んでいるぶん事故が減ります。国内在庫があれば納期も読めます。初回はここから選び、数量が増えた段階でカスタムボトルへ移ってください。容器の考え方は化粧品OEMを小ロットで進める手順でも整理しています。

賦香率で分かれる4つの種類

賦香率で分かれる4つの種類|香水 OEM 小ロット

香水は香料の濃度によって呼び方が変わります。呼称の違いは持続時間と価格帯に直結し、容器の容量にも影響します。

賦香率が高いほど香りは長く残り、少量で成立します。低いほど気軽に使える価格帯に収まり、容量は大きめになります。どの種類で出すかを先に決めておくと、ボトルの容量と本数の見積もりが早く固まります。

種類賦香率の目安持続の目安向いている使い方
パルファム15〜30%5〜7時間少量高単価。贈答や限定品
オードパルファム10〜15%4〜5時間ブランドの中心に置く定番
オードトワレ5〜10%3〜4時間日常使い。最初の1本に選ばれやすい
オーデコロン2〜5%1〜2時間軽い使い心地。数量を出す設計に向く

数値は目安であり、処方と香料の構成によって前後します。オードトワレは在庫を回しやすく、初回の小ロットで選ばれる場面が多い区分です。パルファムは単価を上げられる一方、少量でも原料費が上がります。

賦香率が高いとエタノール濃度も上がる点は覚えておいてください。前述の危険物区分に関わるため、工場側の対応可否に跳ね返ることがあります。

既存香料とオリジナル調香で費用と期間が変わる

同じ香水でも、香りをどう用意するかで話が変わります。ここが見積もりのぶれる最大の要因です。

既存香料を使えば最短約1ヶ月から動く

メーカーが持っている香料をベースにする方法です。処方が確定しているため、試作の回数が減り、期間も読めます。

化粧品区分のフレグランスであれば、ブギウギ株式会社では100個程度から相談を受け付けています。この条件なら最短約1ヶ月程度での納品が可能です。1,000個からと言われて諦めた方も多いのですが、化粧品区分のスキンケアやヘアケアと同じく、フレグランスも100個からご相談いただけます。他の商材での考え方は100個から作るときの前提にまとめています。

オリジナル調香は原料の買い切りが前提になる

香りを一から作る場合、調香師が配合を組み立てます。トップ、ミドル、ラストと時間で変化する三層を作り込むため、試作と確認の往復が発生します。

費用の構造も変わります。調香で使う原料は買い切りが前提で、使い切らなかった分も引き取ることになります。少量生産では、この原料費が1本あたりの単価に重く乗ります。期間も既存香料より延びます。オリジナルの香りは強い差別化になりますが、初回から選ぶかどうかは販売計画と合わせて判断してください。

費用は4つの要素に分かれる

見積もりの内訳を分けて見ると、どこを削れるかが見えてきます。商材をまたいだ相場観は化粧品OEMの費用の見方を参照してください。

要素何で変わるか
中身(バルク)賦香率、香料の種類、既存かオリジナルか
容器既製かカスタムか、ガラスの仕様、ポンプの方式
外装外箱、ラベル、シュリンク包装の有無
加工賃充填方式、数量、検品の条件

初回の予算が限られている場合は、中身を既存香料に寄せて外装へ配分する形が取りやすくなります。香水は店頭でもECでも、最初に目に入るのは箱とボトル。

販路によって選ぶべき容量は変わる

同じ香水でも、どこで売るかによって最適な容量と価格帯がずれます。作ってから販路を考えると、容器を作り直すことになります。立ち上げ全体の流れは化粧品ブランドの立ち上げ方で扱っています。

自社ECとD2Cでは、リピートを取りにいく設計が中心になります。30mlから50mlの定番容量を軸に置き、初回購入者向けに小容量のミニサイズを添えると、香りを試してから本体に進む導線を作れます。サロンや店舗では、施術後の物販として手に取られるため、持ち歩ける小容量が動きます。

ノベルティと記念品は考え方が変わります。単価より配布数が優先されるため、10mlから20ml程度の小容量にして数量を確保する形が現実的です。周年記念やブライダルでは、外箱に予算を寄せると受け取った側の印象が変わります。推し活やIPコラボは、香り以上にパッケージとモチーフが購買の理由になります。数量が読みにくい企画なので、小ロットで出して反応を見る進め方が合います。

販路容量の目安優先すること
自社EC・D2C30〜50ml+ミニサイズリピート導線と香りの試用
サロン・店舗15〜30ml持ち帰りやすさ
ノベルティ・記念品10〜20ml配布数と外箱の印象
推し活・IPコラボ10〜30mlパッケージとモチーフ

相談から納品までに決めておくこと

相談から納品までに決めておくこと|図解

進行が止まる箇所はだいたい決まっています。先に決めておけば減らせるのは、見積もりの往復。

香りとボトルは同時に決める

香りだけ先に決めて容器を後回しにすると、選んだボトルが充填ラインに合わないことがあります。口径と方式は工場の設備に依存するため、候補の段階で工場側に確認してください。

表示物の準備を早めに始める

化粧品には全成分表示の義務があります。ラベルに載せる項目は成分だけではなく、製造販売業者の名称と住所、内容量、製造番号も含まれます。デザインを固めてから表示項目が入らないと判明する事態を避けるため、レイアウトの段階で枠を確保しておいてください。

製造販売業の許可を誰が持つかも先に整理しておく項目です。自社で取得するのか、許可を持つ事業者に製造販売元として入ってもらうのかで、責任の所在と手続きが変わります。

効能をうたわない前提で文言を考える

香水は化粧品なので、書ける範囲が決まっています。リラックスや安眠といった心身への作用は、医薬品的な効能にあたるため表示できません。香りの印象や使う場面を描く方向で言葉を選んでください。

まとめ

香水OEMの小ロットは、香りの決め方ではなく瓶詰めの工程で可否が決まります。カシメ式は密閉性に優れる一方、専用機械を持つ工場が限られます。ネジ式を選べば対応できる工場は広がり、インナーキャップを併用すれば揮発と液漏れを抑えられます。

初回はメーカーの既製ボトルから選んでください。海外製の支給資材は個体差が事故につながり、割れや充填不良の責任が発注側に残ります。

香りは既存香料をベースにすれば期間が読めます。化粧品区分のフレグランスなら、ブギウギ株式会社では100個程度からのご相談をお受けしており、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。オリジナル調香を選ぶ場合は、原料の買い切りが前提になる点を見積もりに織り込んでおいてください。

販路によって適した容量は変わります。作る前にどこで売るかを決めておけば、容器のやり直しを避けられます。

よくある質問

香水は本当に100個から作れますか

化粧品区分のフレグランスであれば、100個程度からのご相談をお受けしています。ただし数量だけで決まるものではなく、選ぶボトルの方式が条件に関わります。カシメ式を希望される場合は対応できる工場が限られるため、ネジ式と既製ボトルの組み合わせのほうが進めやすくなります。

海外で買い付けたボトルを持ち込めますか

持ち込み自体は相談できますが、初回はおすすめできる方法ではありません。海外製のガラス瓶は口元のサイズや肉厚に個体差が出ることがあり、充填機が正しく検知できない、圧着の段階で割れるといった問題が起きます。支給資材の品質は工場側が保証できないため、不良が出た場合の損失は発注側に残ります。

自分で香料を仕入れて詰めることはできますか

肌につける香水は薬機法上の化粧品にあたり、瓶詰めは製造行為です。化粧品製造業の許可を持つ工場でなければ行えません。自宅やレンタルスペースでの小分けは、この点で成立しない方法です。許可を持つ工場に委託する形が前提になります。

オリジナルの香りを作るとどのくらい費用が変わりますか

調香で使う原料は買い切りが前提となり、使い切らなかった分も引き取ることになります。少量で作る場合、この原料費が1本あたりの単価に大きく乗ります。期間も既存香料を使う場合より延びます。初回は既存香料をベースにして、販売の手応えを見てからオリジナル調香に移る進め方も選べます。

香りにリラックス効果があると書いてもよいですか

書けません。香水は化粧品であり、心身への作用をうたうと医薬品的な効能の標榜にあたります。リラックス、安眠、ストレス軽減といった表現は使えません。香りの系統や使う場面、まとう印象を描く方向で文言を組み立ててください。