シャンプー台で毎日使い、お客様に勧めている商品を、自分の店の名前で出せないか。美容室のオリジナルシャンプーは、スキンケアなどと同じ化粧品区分のヘアケアであれば、メーカーの既存処方と既製の容器を使う前提で、100本程度から相談できます(ブギウギ株式会社の場合。処方を一から作る場合の本数は要相談)。決める順番は、処方より先に客層です。どんなお客様が多い店かで、選ぶ使用感も、組み合わせるトリートメントも、似合う容器も変わります。
この記事の要点
美容室のオリジナルシャンプーは、客層と施術メニューから使用感を決め、トリートメントと2品1組で組むと店販につなげやすくなります。
この記事でわかること
- オリジナルの度合いの選び方と、本数の目安
- カラー、年齢層、メンズといった客層ごとの処方の選び方
- シャンプーとトリートメントを2品で組む理由
- 既製の香料とオリジナルの調香の選び分け
- 容器とラベルで高級ラインに寄せる方法
美容室のオリジナルシャンプーとは
美容室のオリジナルシャンプーとは、OEMメーカーに製造を委託し、自店の名前を付けて施術と店販に使うシャンプーのことです。製造と品質の管理はメーカー側の体制で行うため、サロンが製造の許可を取る必要はありません。サロンが担うのは、どんな商品にするかの企画と、お客様への販売です。
既製のサロン専売品を仕入れて売る形との違いは2つ。使用感と見た目を店が選べること、そしてほかの店に同じ商品が並ばないことです。施術で使っている商品をそのまま家でも使ってもらえるので、仕上がりの説明と店販の提案がひと続きになります。
進め方と費用の全体像は、サロン専売ヘアケアの進め方と費用の記事にまとめています。この記事では、その中の「何を作るか」に絞って掘り下げます。
どこまでオリジナルにするかを先に決める

最初の分かれ道は、処方をどこまで自店のものにするかです。本数と期間はここでほぼ決まります。
| 既存の処方を使う | 処方から作る | |
|---|---|---|
| 中身 | メーカーが持つ処方から選び、使用感や香りを調整する | 洗浄成分や配合の考え方から一緒に組み立てる |
| 本数の目安 | 100本程度から相談できる(既製の容器を使う前提) | 相談で決まる |
| 期間 | 100本なら最短約1ヶ月程度 | 試作を重ねる分だけ長くなる |
| 向いている店 | 初めて自店の商品を出す店、反応を見てから広げたい店 | 看板メニューに合わせた専用の商品を作りたい店 |
初めての1本なら、既存の処方から選べば100本程度から始められます。既存の処方でも、泡立ちや洗い上がりの質感、香りは調整の対象になるため、「どこかで見た商品」にはなりにくいもの。売れ行きと手応えを見てから、2本目で処方から作る段階に進む店もあります。
なお、中身はメーカーの既製品のまま、ラベルだけを店の名前に替える形を案内するメーカーもあります。本数はさらに少なく済みますが、中身がほかの店と同じになりうる点は、オリジナルを打ち出したい店にとって判断の分かれ目になります。
処方は施術メニューと客層から選ぶ

処方を選ぶ軸は、成分の名前ではなく、店に来るお客様の髪と、その前後の施術です。メーカーへは効能ではなく使い心地の言葉で伝えると、試作の方向がぶれません。
カラーやパーマのお客様が多いサロン
カラーやパーマの後は、髪がきしみやすい状態で家に帰ります。この場合、泡立ちの強さより、洗い上がりのしっとり感とすすぎの指通りを優先して使用感を決めます。洗浄成分の系統で洗い上がりは大きく変わるため、系統ごとの違いはアミノ酸シャンプーの記事で確かめてください。
年齢層の高いお客様が多いサロン
髪のボリュームや頭皮の状態を気にするお客様が多い店では、重くならない軽い洗い上がりと、頭皮まで泡を届けやすい容器の形が候補になります。頭皮ケアを主眼に置く場合の組み方は、スカルプシャンプーの記事で扱っています。薬用(医薬部外品)にすると、承認の工程が入るため、化粧品のシャンプーとは本数も期間も別の条件です。
メンズやファミリーが多いサロン
男性客や家族連れが多い店では、しっかりした泡立ちと、さっぱりした洗い上がりを求める場面が増えます。家族で使うなら、ポンプ付きの大きめの容量も選択肢です。1本を家族で使い切る前提なら、詰め替え用を用意するかも同じタイミングで決めておきます。
| 客層 | 優先する使用感 | 合わせて決めること |
|---|---|---|
| カラーやパーマが多い | しっとりした洗い上がり、すすぎの指通り | 洗浄成分の系統 |
| 年齢層が高い | 軽い洗い上がり | 頭皮に届けやすい容器の形 |
| メンズやファミリーが多い | しっかりした泡、さっぱり感 | 容量と詰め替え用 |
使用感は細かく作り込めますが、パッケージや販売の場で書ける効能には上限があります。化粧品のシャンプーが書けるのは、「頭皮、毛髪を清浄にする」「クシどおりをよくする」「毛髪のつやを保つ」といった頭皮と毛髪の16項目の範囲です(化粧品の効能の範囲・厚生労働省)。「カラーの色持ちを良くする」は、この範囲に入りません。「ダメージを補修する」は、補修成分が髪の表面を覆うといった物理的な補修が事実としてあるなら、使っている間の効果として書けます。「傷んだ髪を修復する」のように、髪が元の状態へ戻ると読める書き方はできません。店頭のPOPやSNSで書ける範囲は、美容室の店販と薬機法の記事にまとめています。
シャンプーとトリートメントは2品1組で組む
お客様が家で使うのは、シャンプーとトリートメントの組み合わせです。店販でも2品をそろえて提案した方が、使い心地の説明が一度で済み、香りや使用感がそろった状態で家でも使ってもらえます。
2品で組むときに決めるのは3点です。1つ目は香りで、2品を同じ香りにそろえると、ブランドとして覚えてもらいやすくなります。2つ目は使用感の役割分担。シャンプーは軽めに洗い、トリートメントでしっとりさせる、といった分け方が組みやすい形です。3つ目は相方の剤形で、すすいで使うインバスが基本の組み合わせになります。
洗い流さないアウトバスのトリートメントやヘアオイルは、3品目として後から足す方が、最初の本数と費用を抑えられます。インバスとアウトバスの作り分けは、ヘアトリートメントの記事で詳しく扱っています。
何本ずつ作るかは、使い切るまでの期間と、店に置いておける量で決まります。シャンプーとトリートメントでは1回に使う量が違うため、同じ本数で作ると片方だけが先に減ることもあります。施術で使う分と店販に回す分を分けて見積もると、追加の発注の時期が読みやすくなります。
香りは店の空気とそろえる
香りは、店に入った瞬間の印象と、家でボトルを開けた瞬間の印象をつなぐ要素です。シャンプーの香りが店の空気と合っていると、家で使うたびに店での時間を思い出してもらえます。
香りの決め方は2通りあります。
| 決め方 | 進め方 | 向いている店 |
|---|---|---|
| 既製の香料から選ぶ | フローラル、シトラス、ハーバルといった方向を伝え、メーカーの香料の候補から選ぶ | 費用を抑えて早く出したい店 |
| オリジナルで調香する | 香りの原料を仕入れ、調整を繰り返して店だけの香りを作る | 店の空間づくりまで香りで統一したい店 |
オリジナルの調香もできますが、原料の仕入れと調整の繰り返しが入る分、費用は上がります。どちらにするかは予算と相談して決めてください。既製の香料から選ぶ場合の調整の範囲は、シャンプーのOEMの記事でも触れています。
サロンワークの視点では、施術中の香りの強さも確かめておきます。シャンプー台はお客様の顔の近くで使うため、店販用のボトルで心地よい強さでも、施術では強すぎることがあります。香りによって書ける効能は「香りにより毛髪・頭皮の不快臭を抑える」までで、これも16項目の1つです。
高級ラインに寄せる方法

価格帯を上げたいなら、中身だけでなく、手に取ったときと棚に並んだときの見え方まで含めて組み立てます。高級感は、容器、ラベル、容量と価格の釣り合い、店での見せ方の4つで作れます。
容器とポンプ
手に取ったときの重さ、表面の質感、ポンプの押し心地は、価格の印象を大きく左右します。マットな質感のボトルや、押したときに一定量が出るポンプは、既製の容器の中からでも選べます。既製の容器から選べば、100本程度からという条件のまま進められます。形から作る特注の容器は、本数も期間も別の条件になります。
ラベルと外箱
高級ラインに寄せるなら、表のラベルに載せる文字を絞り、余白を残します。外箱を付けると、贈り物としての提案もできるようになります。裏面には全成分の名称をはじめとする法定の表示が入るため、表のデザインは裏面の文字量も見込んで決めます。
容量と価格の釣り合い
価格を上げるほど、お客様は「何日使えるか」を気にします。容量と、1回に使う量の目安をそろえて伝えると、価格の納得感が変わります。店販の値付けの考え方は、別の記事で詳しく扱う予定です。
サロンワークでの見せ方
最も効く見せ方は、施術で実際に使うことです。シャンプー台で使い、仕上がりを見てもらってから、セット面やレセプションに並べた同じボトルを紹介します。施術で使うボトルを店販品と同じ見た目にそろえておくと、説明が短く済みます。
相談から納品までの流れと準備

既存の処方を使う場合、相談から納品までは、100本なら最短約1ヶ月程度です。処方から作る場合や、特注の容器を使う場合は、その分の期間が加わります。
| 工程 | 決めること |
|---|---|
| 相談 | 客層、施術メニュー、作りたい品目を共有する |
| 処方と香りの選定 | 既存の処方か処方から作るか、香りの決め方を選ぶ |
| 試作 | シャンプー台で実際に使い、使用感を確かめる |
| 容器とラベル | 容器を選び、表と裏の表示を確定する |
| 製造 | 100本程度から製造する |
| 納品 | 施術と店販で使い始める |
相談の前に、次の5つを書き出しておくと話が早く進みます。客層と多い施術メニュー、2品で作るか1品で始めるか、香りを既製から選ぶか調香するか、容器と価格帯のイメージ、そして何本ずつ作りたいか。決まっていない項目があっても、相談しながら決めていけます。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(e-Gov) | 化粧品と医薬部外品の区分、製造販売の枠組み |
| 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号・厚生労働省) | 化粧品のシャンプーが書ける頭皮と毛髪の効能(16項目を含む56項目) |
まとめ
美容室のオリジナルシャンプーは、処方より先に客層から決めます。カラーやパーマが多い店はしっとりした洗い上がり、年齢層が高い店は軽さと容器、メンズやファミリーが多い店は泡と容量、と使用感の優先順位が変わるためです。そのうえでトリートメントと2品1組で組み、香りを店の空気とそろえ、容器とラベルで価格帯に合った見た目に仕上げます。既存の処方と既製の容器を使えば、化粧品区分のヘアケアは100本程度から相談できます。まずは客層と施術メニューを書き出すところから始めてください。
よくある質問
美容室のオリジナルシャンプーは何本から作れますか?
化粧品区分のシャンプーで、メーカーの既存処方と既製の容器を使う場合は、100本程度から相談できます。処方を一から作る場合や特注の容器を使う場合は、本数も期間も個別の相談になります。初めての1本は既存の処方から選び、反応を見てから広げる進め方が始めやすい形です。
香りをオリジナルで作れますか?
作れます。既製の香料から選ぶ形と、オリジナルで調香する形の両方に対応しています。オリジナルの調香は、香りの原料の仕入れと調整の繰り返しが入るため、既製の香料から選ぶより費用が上がります。予算に合わせてどちらにするかを決めてください。
シャンプーだけ先に作ってもいいですか?
1品から始めることもできます。ただ、お客様が家で使うのはシャンプーとトリートメントの組み合わせなので、2品でそろえた方が店販の提案はしやすくなります。先にシャンプーで反応を見る場合も、後から同じ香りでトリートメントを足せるように、香りの方向は最初に決めておくと進めやすくなります。
カラーの色持ちをうたえますか?
化粧品のシャンプーでは、色持ちをうたうことはできません。化粧品が書ける効能は頭皮と毛髪の16項目の範囲で、クシどおりをよくする、毛髪のつやを保つといった表現までです。カラーのお客様向けの商品は、洗い上がりの質感やすすぎの指通りといった使用感で特徴を伝えます。
施術でも同じシャンプーを使えますか?
使えます。店販用と同じシャンプーを施術で使うと、仕上がりを体験してもらってから紹介できるため、店販につなげやすくなります。施術用に大容量のボトルを別に作る場合は、本数や容器の条件が変わるため、個別の相談になります。

