他社のOEMで製造している化粧品の製造先は、販売の途中からでも変えられます。増産やリニューアルを機に、いまの商品を別のメーカーで作り続ける選択です。ただし、同じ処方で作り直せるかどうかは事前には決まっていません。分かれ目は、処方の権利の所在。前のメーカーから処方の開示を受けられるのか、全成分表示をもとに作り直すのかで、進め方も期間も変わります。売れている商品だからこそ、販売を止めない段取りがこの判断の中心になります。
この記事の要点
化粧品OEMの製造先は途中から変えられます。分かれ目は処方の権利の所在で、開示を受けて再現するか、全成分表示から作り直すかが決まります。
この記事でわかること
- 化粧品OEMの乗り換えで最初に確かめること
- 処方の権利の3つのパターンと、それぞれの進め方
- 開示された処方の再現と、全成分表示からの作り直しの違い
- 裏面ラベルと容器をどこまで差し替えるか
- 旧商品の在庫を売り切りながら新商品へつなぐ売り方
- 医薬部外品の乗り換えが難しい理由
化粧品OEMの乗り換えとは
化粧品OEMの乗り換えとは、いま販売している商品の製造委託先を別のメーカーへ切り替え、同じ商品として作り続けることです。ブランドと販売はそのままで、作り手だけが変わります。
ゼロからの商品開発と違うのは、目指す完成品がすでに存在する点です。処方も容器も売り方も決まっていて、市場での評価も出ています。だからこそ、新しい製造先との間で決めることは「何を作るか」ではなく「どこまで同じに作れるか」に絞られます。
OEMの仕組みそのものから確かめたい方は、化粧品OEMの全体像を整理した記事から読み進めてください。
乗り換えを考えるきっかけ
きっかけの多くは、商品が売れて次の段階に進むときに訪れます。守りの手段ではなく、事業を伸ばすための選択肢のひとつです。代表的なきっかけは次の4つです。
- 販売数が伸び、いまの製造体制では増産の相談がしづらくなった
- リニューアルを予定していて、処方や容器の見直しと同じタイミングで製造先も見直したい
- 製造先を集約して、発注や品質のやり取りを一本化したい
- 供給を安定させるため、製造の相談先を複線化しておきたい
共通しているのは、すでに売れている商品を持っていることです。ゼロからの立ち上げと比べて、企画のやり取りが少なく、発注の見通しも立てやすい状態から始められます。
乗り換えできるかは処方の権利で決まる

同じ商品を作り直せるかは、処方の権利がどこにあるかで先に決まります。営業トークや設備よりも先に、この一点を確かめてください。パターンは3つに分かれます。
処方が自社にある
処方や仕様書を委託者である自社が持っている契約なら、乗り換えの障壁は最も低くなります。仕様書を新しい製造先に渡し、同じ原料と配合率で再現を進められるからです。
ただし、原料の調達先や製造設備の違いで、仕上がりが微妙に変わることはあります。仕様書があっても試作での確認は省けません。
処方の開示を受けられる
処方が前のメーカーの所有でも、交渉や契約条件によっては開示を受けられます。リニューアルや製造終了を機に、有償で処方を譲り受ける形です。開示を受けられれば、同じ処方での再現を目指せます。
処方が開示されない
処方は各メーカーのノウハウであり、開示されないのが一般的です。この場合は、容器に記載された全成分表示を手がかりに、処方を組み直します。まったく同じ配合の複製ではなく、使用感を現行品に近づけていく進め方になります。
契約書で確かめる条項
鍵は、発注前に交わした契約書。処方の帰属、契約終了後の製造の扱い、金型や版下といった資材の所有が、どう定められているかを確かめます。条項の解釈に迷う場合は、契約に詳しい弁護士に確認してから動くと、後の交渉がこじれません。
処方を再現する2つの道筋

処方の権利の確認が済んだら、再現の道筋はふたつに分かれます。どちらの道でも、最後は試作品を現行品と並べて確かめる工程に行き着きます。
開示された処方をもとに再現する
処方が手元にある場合は、同じ原料を手配できるかの確認から始まります。原料には製造元や等級の違いがあり、同名でも品質が揃うとは限りません。原料が揃えば配合率どおりに試作し、現行品と比較して仕上がりを確かめます。
全成分表示から作り直す
処方が開示されない場合の出発点は、容器に記載された全成分表示です。化粧品の全成分は配合量の多い順に記載されるため、処方の骨格は推定できます。ただし、全成分表示から配合率までは分かりません。同じ成分を並べても、量が違えば使用感は変わります。
さらに、同じ原料が手に入らないときは、一部の成分を同じ系統の別成分で置き換えることがあります。置き換えた処方は、試作と使用試験で現行品との差を確かめながら詰めていきます。テクスチャー、香り、経時での安定性。確かめる項目が多いほど、試作の往復は増えますが、この工程を省くと発売後に使用感の違いが顧客に届いてしまいます。
表示と資材の差し替え

処方の再現と並行して、ラベルと容器の扱いを決めます。差し替えの中心は、裏面の表示。ここは制度上、そのまま使い回せません。
裏面ラベルは差し替えになる
化粧品の容器には、製造販売業者の氏名または名称と住所の表示が義務づけられています(薬機法第61条)。全成分の名称も表示します。製造先の変更で製造販売元の表示が変われば、裏面ラベルは作り直しです。成分を置き換えた場合は、全成分表示の記載も新しい処方に合わせて直します。
表示の項目と書き方は、東京都健康安全研究センターの化粧品の表示の案内にまとまっています。表示可能な文言の確認まで含めて、新しい製造先と一緒に進めてください。
容器を変える場合は表面のデザインも見直す
いまの容器と同じものを新しい製造先が調達できるとは限りません。容器の形状が変われば、表面ラベルの寸法やデザインの一部も変更になります。ブランドの見た目を保ちたい商品ほど、容器の調達可否は見積もりの段階で確かめておきたい項目です。
逆に、リニューアルとして打ち出す予定なら、容器の変更は見た目を刷新する機会にもなります。どちらの方針かを先に決めておくと、資材の判断で迷いません。
乗り換えの流れと期間

順番は、相談、見積もり、試作、使用試験、表示の確認、製造。ゼロからの開発と比べて企画の工程が短い一方、現行品との比較という乗り換え固有の工程が入ります。
| 工程 | 決めること |
|---|---|
| 相談 | 現行品の情報(全成分表示、契約の状況、販売数)を共有する |
| 見積もり | 処方の再現方法、容器の調達、ロットと費用の条件を出す |
| 試作 | 現行品と並べて使用感を比べる |
| 使用試験 | 成分を置き換えた場合に、安定性と使用感を確かめる |
| 表示の確認 | 裏面ラベルの記載を新しい体制に合わせて作り直す |
| 製造と納品 | 在庫の切り替え時期に合わせて納品する |
ロット、費用、期間は見積もりで個別に決まります。処方の再現方法、容器の調達、試作の回数で工数が大きく変わるため、一律の条件は示せません。ブギウギ株式会社でも、他社OEMで製造している商品の切り替えの相談を受け付けています。費用の考え方そのものは、化粧品OEMの費用の内訳を整理した記事が参考になります。
旧商品の在庫を売り切って切り替える

製造先の切り替えで見落とされやすいのが、手元に残る旧商品の在庫です。目的は、販売の空白を作らないこと。旧商品を売りながら、新商品を準備する二本立てで組みます。
新商品はリニューアルとして打ち出す
製造先の変更で処方や容器が変わるなら、それを隠すのではなく、リニューアルとして正面から告知する方が売り場は作りやすくなります。改良した点、変わらない点、切り替えの時期を伝えれば、既存の顧客は安心して移行できます。
旧商品は期限を決めたキャンペーンで送り出す
旧商品の在庫は、終了日を明示したキャンペーンで売り切り、その告知を新商品の予告につなげます。このとき、値引きの表示には景品表示法の決まりがあります。「通常価格」と比較する二重価格表示には、直近にその価格で販売していた実績が要ります。「期間限定」と書くなら、終了日を決めて表示します。実態のない限定表示は不当表示になるため、キャンペーンの設計段階で確かめてください。
在庫を売り切るまでの資金のやりくりは、追加発注と入金の時期から資金繰りを整理した記事で扱っています。
医薬部外品は乗り換えのハードルが高い
薬用化粧品をはじめとする医薬部外品は、品目ごとに承認を受けて製造販売されています。製造先の変更で製造販売元が変わる場合、承認を取り直すことになります。
実績のある成分や処方の範囲でも、申請から承認までおよそ半年から1年かかります。売れている商品の勢いを保ったまま移すのは難しく、乗り換えは基本的にハードルの高い選択です。受けられるかどうかは内容によるため、個別に相談する形になります。有効性や安全性の資料を新たに揃える新規の承認となると、年単位の期間とまとまった費用がかかり、乗り換えの手段としては現実的ではありません。
化粧品として販売している商品なら、この承認の工程はありません。自分の商品がどちらの区分かは、容器の「薬用」の表示や販売名で確かめられます。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(e-Gov) | 化粧品の直接の容器への記載事項(第61条)、医薬部外品の承認の枠組み |
| 化粧品の表示(東京都健康安全研究センター) | 製造販売業者の氏名と住所、全成分の名称をはじめとする法定表示の項目 |
| 化粧品製造販売届・届出事項変更届(大阪府) | 製造販売に関わる届出と変更手続きの例 |
| 表示規制の概要(消費者庁) | 二重価格表示と期間限定表示の考え方(優良誤認・有利誤認) |
まとめ
化粧品OEMの乗り換えは、処方の権利の確認から始まります。仕様書が自社にあれば同じ処方で、開示を受けられれば再現で、開示されなければ全成分表示からの作り直しで進めます。どの道でも、試作で現行品と比べる工程と、裏面ラベルの差し替えは省けません。旧商品の在庫は期限を決めたキャンペーンで売り切り、新商品はリニューアルとして打ち出せば、販売を止めずに切り替えられます。ロットや費用は商品の内容で変わるため、まずは全成分表示と契約の状況を手元に揃えて、見積もりの相談から始めてください。
よくある質問
前のメーカーに処方を教えてもらえますか?
処方はメーカーのノウハウにあたるため、開示されないのが一般的です。ただし、契約条件や交渉によっては、有償での譲り受けや開示に応じてもらえる例もあります。まずは発注時の契約書で処方の帰属を確かめ、開示の可否を前のメーカーに相談してください。開示されない場合でも、全成分表示をもとに処方を組み直す道があります。
まったく同じ使用感になりますか?
処方と原料が完全に揃わない限り、厳密に同一の再現は約束できません。全成分表示から作り直す場合は配合率を推定で組むため、試作と使用試験を重ねて現行品に近づけていきます。原料の調達の都合で一部の成分を同じ系統の別成分に置き換えることもあり、その場合は全成分表示の記載も変わります。
販売を止めずに切り替えられますか?
旧商品の在庫を売りながら新商品の製造を進めれば、販売の空白を作らずに切り替えられます。旧商品は終了日を決めたキャンペーンで売り切り、新商品はリニューアルとして告知する組み方です。切り替えの時期から逆算して、試作と表示の確認の期間を見込んでおくことがポイントになります。
何個から、いくらで乗り換えられますか?
乗り換えの場合、ロットも費用も商品の内容によって変わるため、見積もりでの個別対応になります。処方の再現方法、容器の調達、試作の回数で工数が変わるからです。ブギウギ株式会社では、現行品の全成分表示と希望の数量をうかがったうえで、条件を個別にご案内しています。
医薬部外品でも乗り換えできますか?
医薬部外品は品目ごとの承認が要るため、製造販売元が変わる乗り換えでは承認の取り直しが発生します。実績のある範囲の承認でも申請からおよそ半年から1年かかり、基本的には難しい選択です。受けられるかは内容によるため、個別にご相談ください。化粧品区分の商品であれば、この承認の工程はありません。

