自店のオリジナルシャンプーができた。レジ横にPOPを置き、スタッフのSNSでも紹介したい。このとき、美容室の店販のPOPやSNSの投稿も、条件がそろえば薬機法の広告として扱われます。特に気をつけたいのが、美容師が推薦している旨の表現で、事実であっても使えません。一方で、店頭で使い方を実演して見せることは禁止されていません。使い方を見せることと、美容師として勧めることの違いが、売り場で使える言葉を決めます。

この記事の要点

美容室の店販のPOPやSNSも広告にあたります。美容師が推薦している旨の表現は事実でも使えませんが、店頭で使い方を実演することは禁止されていません。

この記事でわかること

  • POPやスタッフのSNSが広告にあたる3つの条件
  • 美容師の推薦にあたる表現と、あたらない場面
  • ヘアケアで書ける効能と「補修」の範囲
  • 使用前後の写真とお客様の声の扱い
  • スタッフのSNSで気をつけるステマ規制

店頭のPOPもスタッフのSNSも広告になる

店頭のPOPもスタッフのSNSも広告になる|図解

広告にあたるかどうかは、媒体の形ではなく3つの条件で決まります。購入を促す意図が明らかであること、商品名が分かること、誰でも見られる状態にあること。日本化粧品工業連合会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」は、この3つを満たせば、SNSや販売促進のツールも含めてすべての媒体が対象になると整理しています。

条件店販での例
購入を促す意図がある「レジでお求めいただけます」と添えたPOP
商品名が分かる自店のブランド名と商品名が写った投稿
誰でも見られる店頭の掲示、公開アカウントのSNS

つまり、店頭のPOPも、スタッフが店の商品を紹介する公開の投稿も、広告として薬機法のルールが当てはまります。形式ではなく、受け手が3つを満たすと受け取るかで判断される点も押さえておいてください。自店で作った商品でも、仕入れた商品でも、扱いは同じです。

美容師の推薦にあたる表現は使えない

美容師の推薦にあたる表現は使えない|図解

美容室ならではの注意点が、美容師の推薦にあたる表現です。医薬品等適正広告基準は、医薬関係者と並んで理容師と美容師を名指しし、推薦などの広告を禁じています。

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。

出典:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(厚生労働省)

厚生労働省の解説は、推薦などの広告は消費者の認識に与える影響が大きいため、事実であっても不適当としています。本当に店の美容師が選んだ商品でも、その旨を広告に書くことはできません。

使えない表現の例理由
美容師おすすめ/スタイリストが選んだシャンプー美容師が推薦、選用している旨の広告
皮膚科医推奨医薬関係者の推薦
〇〇大学が認めた学校や団体の公認(医薬系以外の大学も範囲に入りうる)
特許取得の成分特許に関する表現は事実でも本項に抵触する

肩書きを言い換えれば済むわけでもありません。業界のガイドラインは、美容家や美容ライターなど専門家を名乗る人の推薦も、影響が大きい場合は抵触のおそれがあるとしています。

判断が分かれるのが、「当店のスタイリストが開発」のように、美容師が商品の企画や開発に関わった事実を述べる表現です。基準と解説、業界のガイドラインのいずれにも、この形についての直接の定めはありません。違反かどうかは広告全体の文脈で判断されるため、肩書きを添える表現は、掲載の前にメーカーの薬事の確認を通してください。

施術や店頭で使い方を見せるのは問題ない

施術や店頭で使い方を見せるのは問題ない|美容室 店販 薬機法

推薦が禁じられていると聞くと、店頭で商品の話をすること自体をためらいがちです。けれども、厚生労働省の解説は、使い方を見せることを禁止の対象から外しています。

なお、本項は美容師等が店頭販売において化粧品の使用方法の実演を行う場合等を禁止する趣旨ではない。

出典:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(厚生労働省)

店頭で使い方を実演して見せることは、美容室の店販の最も強い売り方です。ヘアオイルを毛先に何滴なじませるか、シャンプーをどう泡立てるか。お客様の髪で実際に見せれば、言葉で効能を語るより伝わります。

線引きは、「使い方を見せる」と「美容師として勧める」の違いです。使い方を見せ、手触りや香りを確かめてもらうのは問題ありません。そのうえでPOPやSNSに「美容師おすすめ」と書くと、推薦の広告になります。実演で伝え、文字では推薦の言葉を使わない。これが店販の基本の型になります。自店の商品の作り方そのものは、美容室のオリジナルシャンプーの記事で扱っています。

効能は頭皮と毛髪の16項目と補修の範囲で書く

効能は頭皮と毛髪の16項目と補修の範囲で書く|図解

ヘアケアの化粧品が書ける効能は、厚生労働省が定める化粧品の効能のうち、頭皮と毛髪に関する16項目の範囲です。「頭皮、毛髪を清浄にする」「クシどおりをよくする」「毛髪のつやを保つ」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といった言葉がこれにあたります(化粧品の効能の範囲・厚生労働省)。

そのうえで、ヘアケアには「補修」という表現の扱いがあります。業界のガイドラインは、頭髪用の化粧品について、補修成分が髪の表面を覆う、隙間を埋めるといった物理的な補修であれば、表現を認めています。条件は、事実であること、効果は使っている間に限られること、そして対象が髪だけであることです。

書ける表現の例書けない表現の例
髪を補修して髪の質感をととのえる傷んだ髪を修復します
枝毛やパサつきなどの傷んだ髪を補修傷んだ髪が回復します
毛髪補修成分「〇〇」配合健康な髪が甦ります
〇〇成分が髪の内部まで浸透し、髪のダメージを補修します傷んだ髪を補修して本質から髪質改善

違いは、物理的に補うか、治療のように回復させるかです。「修復」「回復」「再生」は、髪が元の状態に戻るように読めるため使えません。カラーの色持ちや、白髪が目立たなくなるといった効能も、化粧品のシャンプーでは書けない範囲です。肌のケアについては、この「補修」の扱いは当てはまりません。

商品ごとの言い換えは、ヘアトリートメントの記事とヘアオイルの記事に表でまとめています。

使用前後の写真とお客様の声

使用前後の写真とお客様の声|図解

SNSの投稿でよく使われるのが、使用前後の写真とお客様の声です。どちらも、効能や安全性の保証に見えないことが条件になります。

業界のガイドラインは、使用前後の写真について、承認された範囲を超える効能を連想させるものや、効果が出るまでの時間や安全性を保証するものを認めていません。比べる写真は同じ条件で撮り、加工をしないことも求めています。シャンプーなら、洗う前と洗った後の頭皮の清浄な状態を比べる写真は、認められる例に挙げられています。

お客様の声は、扱いが2つに分かれます。

内容扱い
効能や安全性についての体験談、感謝の言葉載せない。タレントか一般の人かを問わず、客観的な裏付けにならない
使い方、使用感、香りについての感想事実に基づく感想なら載せられる。大げさな表現や保証にならない形にする

「泡立ちが軽くて洗いやすい」「香りが好き」は使用感の感想です。「髪が生まれ変わった」「これで傷まなくなった」は効能の体験談になります。※印で「個人の感想です」と添えても、載せられない表現を載せられるようにはなりません。

スタッフのSNSはステマ規制に気をつける

スタッフ個人のアカウントで店の商品を紹介する場合は、薬機法に加えて、景品表示法のステルスマーケティング規制が関わります。事業者が広告であることを隠し、第三者の感想を装う表示が規制の対象です。

スタッフが一般のお客様のふりをして口コミを書くことは、最も避けるべき形です。個人のアカウントで紹介するときも、自分が勤めるサロンの商品であることが分かるようにします。「当店のオリジナル商品です」と書く、広告であることを示す表示を付けるといった形です。SNSでの発信の注意点は、インフルエンサーの化粧品OEMの記事でも扱っています。

フリーランスで面貸しのサロンを使っている美容師が自分の商品を紹介する場合も、考え方は同じです。働き方ごとの売り方は、美容師の化粧品OEMの記事にまとめています。

掲載前に確かめること

掲載前に確かめること|図解

POPを作るとき、SNSに投稿するとき、次の5つを順に確かめると、ほとんどの問題は掲載の前に止められます。

順確かめること見るポイント
1広告にあたるか購入を促す意図、商品名、誰でも見られるの3つがそろうか
2推薦の表現がないか美容師、医師、団体の推薦や公認に読める言葉がないか
3効能の範囲か16項目と物理的な補修の範囲に収まっているか
4写真と感想の扱い使用前後の写真が同じ条件か、感想が使用感にとどまるか
5店の商品だと分かるかスタッフの投稿で、店との関係が分かるか

迷う表現は、商品を作ったメーカーの薬事の確認を通してから使ってください。サロン専売のヘアケアを作る進め方と費用はサロン専売ヘアケアの進め方と費用の記事、広告の失敗を含めたサロン専売品づくり全体の注意点はサロン専売品の作り方の記事にまとめています。

本記事の根拠法令・出典

法令・公的資料位置づけ
医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(厚生労働省)医薬関係者、理容師、美容師等の推薦の禁止(基準第4の10)と、店頭での使用方法の実演の扱い
化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版(日本化粧品工業連合会)広告にあたる3つの条件、毛髪の補修表現、使用前後の写真、使用体験談の扱い(業界の自主基準)
化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号・厚生労働省)ヘアケアの化粧品が書ける頭皮と毛髪の16項目
ステルスマーケティングに関する検討会 報告書(消費者庁)広告であることを隠した表示の規制

まとめ

美容室の店販のPOPやスタッフのSNSも、購入を促す意図、商品名、誰でも見られるという3つの条件がそろえば、薬機法の広告として扱われます。美容師が推薦している旨の表現は事実でも使えませんが、店頭で使い方を実演して見せることは禁止されていません。効能は頭皮と毛髪の16項目と、物理的な補修の範囲で書き、使用前後の写真は同じ条件で撮り、お客様の声は使用感や香りの感想にとどめます。スタッフの投稿では店の商品であることを明らかにし、迷う表現は掲載の前にメーカーの薬事の確認を通してください。

よくある質問

POPに「美容師おすすめ」と書けますか?

書けません。医薬品等適正広告基準は、美容師が推薦や選用をしている旨の広告を禁じており、事実であっても不適当とされます。POPでは推薦の言葉を使わず、店頭で使い方を実演して手触りや香りを確かめてもらう形で伝えてください。

「当店のスタイリストが開発」と書けますか?

開発に関わった事実を述べる表現について、基準や業界のガイドラインに直接の定めはありません。推薦にあたるかどうかは広告全体の文脈で判断されるため、書けるとも書けないとも一律には言えません。肩書きを添える表現は、掲載の前にメーカーの薬事の確認を通してください。

シャンプーやトリートメントに「髪を補修」と書けますか?

頭髪用の化粧品であれば、物理的な補修の範囲で書けます。補修成分が髪の表面を覆う、隙間を埋めるといった事実に基づく表現で、効果は使っている間に限られることが条件です。修復、回復、再生のように、髪が治療的に元に戻ると読める表現は使えません。

お客様の感想をSNSに載せてもいいですか?

使い方や使用感、香りについての事実に基づく感想であれば載せられます。髪の悩みが解消した、傷まなくなったといった効能や安全性についての体験談は載せられません。注記を添えても扱いは変わらないため、載せる前に内容が使用感の範囲かを確かめてください。

スタッフ個人のSNSで店の商品を紹介してもいいですか?

紹介できますが、自分が勤めるサロンの商品であることが分かるようにしてください。広告であることを隠して第三者の感想を装う表示は、景品表示法のステルスマーケティング規制の対象です。一般のお客様のふりをして口コミを書く形は避けてください。