トリートメントとコンディショナーとヘアマスク。3つの違いを説明できないまま企画書を書き始めて、手が止まる方は少なくありません。ヘアトリートメントのOEMとは、自社ブランドのトリートメント類の製造をメーカーに委託する仕組みのことです。仕様が分かれる境目は名称ではなく、洗い流すインバスか、洗い流さないアウトバスかという一点にあります。すすぎの有無が処方・容器・使用感のすべてを左右するためです。もう一つの分かれ目は書ける効能表示で、こちらは化粧品か医薬部外品かという区分が決めます。
この記事の要点
ヘアトリートメントのOEMは、洗い流すインバスと洗い流さないアウトバスで処方も容器も分かれます。名称ではなく、すすぎの有無から決めます。
この記事でわかること
- インバスとアウトバスを分ける基準と、その先に波及する3つの項目
- トリートメント・コンディショナー・ヘアマスクの名称と法的区分の関係
- オイル・ミルク・クリーム・ミストの選び分けと酸化安定性の考え方
- 化粧品のトリートメントで書ける毛髪・頭皮16項目の範囲
- 化粧品区分のヘアケアにおけるロット条件と、相談前に決めておく項目
ヘアトリートメントのOEMで最初に決める分岐

トリートメント類のOEMで最初に決めるのは、剤形でもブランド名でもありません。洗い流すか、洗い流さないかという一点です。この分岐が決まると、処方・容器・使用感の方向がまとめて定まります。
インバスとアウトバスを分けるのは「すすぐかどうか」
インバスは浴室内で使い、すすいで落とすタイプを指します。アウトバスは浴室を出てから使い、髪に残したまま仕上げるタイプです。
両者は使う場所の違いに見えて、実際には設計思想が別物になります。すすぐ前提の処方は、短時間で髪に吸着し、余剰分が洗い流されることを想定します。残す前提の処方は、時間の経過とともに酸化しないこと、そして塗布量が多すぎても重くならないことを前提に組み立てます。
| 観点 | インバス(洗い流す) | アウトバス(洗い流さない) |
|---|---|---|
| 使用場面 | 浴室内・シャンプー後 | タオルドライ後・乾いた髪 |
| 設計の主眼 | 短時間での吸着と感触 | 軽さと時間経過での安定性 |
| 代表的な剤形 | クリーム・ペースト | オイル・ミルク・ミスト |
| 主な容器 | チューブ・ジャー・ポンプ | 遮光ボトル・スプレー |
トリートメント・コンディショナー・ヘアマスクの名称に法的な定義はない
3つの名称の違いを法令で調べても、答えは見つかりません。薬機法にはトリートメント・コンディショナー・ヘアマスクを区別する定義がないためです。いずれも頭皮・毛髪用の製品として、同じ枠組みの中で扱われます。
慣習的な使い分けは業界内に存在します。コンディショナーは表面の感触を軽く整え、トリートメントは内部への働きかけを想定し、ヘアマスクは高配合で放置時間を取る、といった区別です。
ただし、この区別は商品企画上の呼び分けにとどまります。名称を変えても、パッケージに書ける効能の範囲は1文字も広がりません。書ける範囲を決めるのは、化粧品か医薬部外品かという区分だけです。
分岐を先に決めると見積もりの精度が上がる
インバスとアウトバスでは、容器も充填ラインも異なります。相談の段階でどちらかが決まっていると、メーカー側が具体的な仕様を前提に検討を進められます。
両方を同時に立ち上げる企画も一般的です。その場合も、それぞれ別の製品として仕様を個別に固める必要があります。シャンプーからの流れで考えるなら、シャンプーのOEMで選べる範囲もあわせて確認しておくと、ライン全体の構成が一度で固まります。
インバストリートメントの設計で決まること
インバスの処方は、すすぎで落ちることを前提に組み立てます。髪に留まる時間が短いため、短時間でどう吸着させるかが処方の中心になります。
すすぐ前提だから吸着性で組み立てる
インバス製品の感触を支えているのは、髪の表面に吸着する成分と油分の組み合わせです。すすいだ後にどれだけ残るかで、指通りの軽さと重さが変わります。
軽い仕上がりを狙うなら吸着量を抑え、しっとりした仕上がりを狙うなら油分を厚くする。この調整幅がインバス設計の主戦場です。サロンでの施術後に使う製品なら、施術直後の髪の状態を前提に配合を寄せることもあります。
コンディショナー・ヘアマスクとの作り分け
同じインバスの中でも、想定する放置時間で設計が変わります。放置時間が長いほど、配合の狙いを効かせる余地が広がるためです。
| 呼称 | 想定する放置時間 | 設計の狙い | 使用頻度の想定 |
|---|---|---|---|
| コンディショナー | すぐにすすぐ | 表面の感触を整える | 毎日 |
| トリートメント | 数分程度 | 感触と質感の調整 | 毎日〜数日に1回 |
| ヘアマスク | 5〜10分程度 | 高配合での集中ケア | 週1〜2回 |
3つを同時に展開するかどうかは、販売チャネルによって判断が分かれます。店販で回転数を確保できるサロンなら3品同時も成立しますが、通販で立ち上げる場合はまず1品に絞る方が在庫の負担が軽くなります。
容器はチューブ・ジャー・ポンプで変わる
インバスの容器は、粘度と使用場面から選びます。浴室内で濡れた手で開けることを前提にするため、開閉のしやすさが選定基準に入ります。
チューブは残量を絞り出しやすく、少量ずつ使う設計に向きます。ジャーは高粘度のヘアマスクに使われ、指ですくう使用感が前提です。ポンプは業務用の大容量で選ばれる形態で、サロンのバックバー用途と相性がよい構造。容器を変えると充填工程も変わるため、仕様確定の前に決めておく項目に入ります。
アウトバストリートメントの設計は軽さと安定性で決まる

アウトバスは髪に残したまま一日を過ごす製品です。そのため、インバスにはない2つの制約が加わります。時間が経っても品質が保たれること、そして塗布量が多くても重くならないことです。
残す前提だから酸化安定性が効いてくる
油分を主体にした製品は、時間の経過とともに空気に触れ続けます。植物油の種類によって、この状態での安定性には差が出ます。
酸化安定性は原料選定の段階で決まるため、後から容器や香りで補うことはできません。安定性の高い油分を主軸に据えるか、酸化を抑える成分を組み合わせるかは、処方設計の初期段階で判断します。香りの決め方にも影響します。時間経過で香りの立ち方が変わる前提で、賦香率を決めることになるためです。
オイル・ミルク・クリーム・ミストの選び分け
アウトバスの剤形は4つに大別されます。狙う仕上がりと、想定する髪質・毛量で選択が変わります。
| 剤形 | 質感の傾向 | 向く髪質・毛量 | 容器の前提 |
|---|---|---|---|
| オイル | ツヤと束感が出る | 硬毛・多毛・ダメージ毛 | 遮光ボトル・スポイト |
| ミルク | 軽く均一に伸びる | 軟毛・細毛・毛量が少ない | ポンプ・チューブ |
| クリーム | 厚みが出てまとまる | 広がりやすい毛質 | チューブ・ジャー |
| ミスト | 最も軽く水分主体 | 根元近くにも使いたい場合 | スプレー |
剤形を1つに絞れない場合は、想定する使用シーンから逆算します。ドライヤー前に使うのか、朝の仕上げに使うのか、外出先で使うのか。使う場面が決まると、必要な容器サイズと携帯性も同時に定まります。
ヘアオイルとの境界をどう考えるか
アウトバストリートメントの中でオイル剤形を選ぶと、企画としてはヘアオイルのOEMと重なります。両者に明確な境界線はありません。
商品名としてどちらを名乗るかは、ブランド内での位置づけで決めます。ヘアケアラインの一部として展開するならトリートメント、単品でスタイリング寄りに売るならヘアオイル、といった判断です。原料オイルごとの質感の違いまで踏み込む場合は、ヘアオイル側の記事で詳しく整理しています。
書ける効能表示は名称ではなく区分で決まる

トリートメントのパッケージや広告に書ける内容は、商品名でも配合成分でもなく、薬機法上の区分で決まります。化粧品として届け出るか、医薬部外品として承認を受けるかの二択です。
化粧品で書けるのは毛髪・頭皮に関する16項目
化粧品が標榜できる効能は、厚生労働省が定める56項目に限られます。このうち毛髪・頭皮に関するものは16項目で、トリートメント類はこの範囲から選んで表示します。
トリートメントの訴求で使いやすいのは、質感と物理的な状態に関する項目です。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ (14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ
出典:厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」
このほか「毛髪にはり、こしを与える」「毛髪をしなやかにする」「クシどおりをよくする」「毛髪につやを与える」なども16項目に含まれます。トリートメントの一般的な訴求は、この範囲でおおむね表現できます。
「補修」は物理的に補う意味でなら書ける
「補修」は56項目にない語ですが、頭髪用の化粧品では使える範囲が決まっています。業界のガイドラインが、補修成分で髪の表面を覆う、内部に浸透させて傷んだ部分の隙間を埋めるといった物理的な補修であれば、表現を認めているためです。トリートメントの広告でよく見る「ダメージを補修する」も、この範囲なら書けます。
条件は2つあります。補修の働きが事実としてあること、そして効果が使っている間に限られることです。一度使えば髪がずっと補修された状態になる、と読める書き方はできません。
書けないのは、「修復」「回復」「再生」のように、髪が治療を受けたように元の状態へ戻ると読める表現です。言い換えるときは、物理的に補う形か、状態をどう保つかに寄せます。
| 言いたいこと | 表現を避けたい形 | 書ける形 |
|---|---|---|
| 傷んだ髪をケアする | 傷んだ髪を修復する | 髪を補修して質感をととのえる/毛髪の水分、油分を補い保つ |
| 枝毛が気になる髪へ | 枝毛を修復する | 枝毛をコートして補修/裂毛、切毛、枝毛を防ぐ |
| 指通りをよくする | 髪質を改善する | クシどおりをよくする |
| ハリのある髪に | 髪を若返らせる | 毛髪にはり、こしを与える |
判断に迷う表現が出てきた場合は、仕様確定の前に確認しておくと後戻りが減ります。パッケージ入稿後に表示を直すと、刷り直しの工程が発生するためです。
医薬部外品にすると変わること
ふけ・かゆみを防ぐといった訴求を打ち出したい場合は、医薬部外品としての承認が選択肢になります。有効成分を配合し、品目ごとに承認を受ける仕組みです。
区分を変えると、書ける範囲だけでなく進め方も変わります。承認・許可の工程が入るため、化粧品より期間がかかり、ロット条件も個別の判断になります。区分の違いそのものについては医薬部外品と化粧品の違いで整理しています。
なお育毛・発毛に関する訴求は、化粧品のトリートメントでは扱えません。育毛剤は医薬部外品の別区分であり、承認を受けた品目だけが該当する効能を表示できます。
ロット・納期とメーカーへの相談準備

トリートメント類は化粧品区分のヘアケアに該当します。そのため、ロットと納期の条件はヘアケアの枠で考えることになります。
化粧品区分のヘアケアなら100個程度から
化粧品区分のヘアケアに限り、100個程度からの相談を受け付けています。この条件で進める場合、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。
ただし、この条件はカテゴリごとに異なります。同じ社内で企画していても、メイクアップや脱毛ワックス、サプリメントは1,000個〜が目安になります。トリートメントと同時にサプリメントを検討している場合、ロットの前提が別になる点を先に押さえておくと計画が立てやすくなります。
| 区分 | 対象 | 最低ロットの目安 | 納期の目安 |
|---|---|---|---|
| 化粧品ヘアケア | トリートメント・コンディショナー・ヘアマスク・アウトバス各種 | 100個〜 | 最短約1ヶ月〜 |
| 医薬部外品 | 薬用トリートメント・育毛剤等 | 仕様により個別 | 承認・許可工程の分だけ長い |
| 一般OEMロット | メイクアップ・脱毛ワックス・食品系 | 1,000個〜 | 約3ヶ月 |
費用については、剤形・容器・配合・ロット数の組み合わせで変動します。仕様が固まる前の段階では幅を持った概算になるため、条件を整理したうえで個別にお見積もりする流れです。
相談前に決めておく4項目
すべてが決まっていなくても相談は始められます。ただし、次の4項目に見当がついていると、初回のやり取りで具体的な話に入れます。
- インバスかアウトバスか(両方の場合はその旨)
- 剤形と容器の希望(未定なら想定する使用シーン)
- シャンプーとセットで展開するか
- 販売チャネル(サロン店販・通販・小売のいずれか)
販売チャネルは容器サイズと価格設計に直結する項目です。サロンの店販であれば業務用の大容量と販売用の小容量を分けるのが一般的で、通販単体であれば送料の観点から容器重量も検討材料に入ります。
ヘアケア全体の進め方やメーカー選びの観点は、ヘアサロンのヘアケアOEMで扱っています。商材を横断して検討している段階であれば、そちらから読むと全体像がつかめます。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法) | 化粧品・医薬部外品の区分と製造販売の根拠法 |
| 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号) | 化粧品が標榜できる56項目の根拠通知 |
| 医薬品等適正広告基準(薬生発0929第4号) | 効能表現の広告上の適否を判断する基準 |
| 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法) | 品質・取引条件の不当表示に関する規制 |
| 化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版(日本化粧品工業連合会) | 頭髪用化粧品の補修表現の範囲(業界の自主基準) |
まとめ
ヘアトリートメントのOEMは、洗い流すインバスか洗い流さないアウトバスかで作り方が分かれます。すすぎの有無が処方の前提を決め、そこから容器と使用感が連動して決まる構造です。
トリートメント・コンディショナー・ヘアマスクという名称は、業界内の慣習的な呼び分けにとどまります。パッケージに書ける効能を決めるのは名称ではなく、化粧品か医薬部外品かという区分です。化粧品なら毛髪・頭皮に関する16項目の範囲で表現します。「補修」は、物理的に補う意味で、使っている間の効果としてなら書けます。
化粧品区分のヘアケアであれば、100個程度からの相談が可能です。剤形も容器も決まっていない段階から、使用シーンの整理を含めてご相談いただけます。
よくある質問
トリートメントとコンディショナーは別々に作る必要がありますか
別々に作ることも、1品に絞ることもできます。薬機法上は両者を区別する定義がないため、どちらの名称を使うかは商品企画上の判断になります。
同時展開の判断は販売チャネルによって変わります。サロンの店販のように回転数が見込める場合は複数品の展開が成立しやすく、通販で立ち上げる段階では1品に絞って在庫の負担を抑える進め方が一般的です。
アウトバストリートメントとヘアオイルはどう違いますか
明確な境界はありません。アウトバストリートメントは洗い流さないタイプの総称で、その中の一剤形がオイルにあたります。
商品名としてどちらを名乗るかは、ブランド内での位置づけで決めます。ヘアケアラインの一部として展開するならトリートメント、単品でスタイリング寄りに販売するならヘアオイルという整理が使いやすい形です。
パッケージに「ダメージを補修する」と書けますか
補修成分が髪の表面を覆う、隙間を埋めるといった働きが事実としてあれば、使っている間の効果として書けます。業界のガイドラインが、頭髪用の化粧品について物理的な補修の表現を認めているためです。
書けないのは、「傷んだ髪を修復する」「髪が回復する」のように、髪が元の状態へ戻ると読める表現です。「補修」の語を使っていても、広告全体で髪が治ると読める作りなら同じ扱いになります。補修と並べて「毛髪の水分、油分を補い保つ」のような16項目の表現も使うと、訴求の幅が広がります。
ヘアマスクだけを100個から作れますか
化粧品区分のヘアケアに該当するため、100個程度からのご相談をお受けしています。最短約1ヶ月程度での納品が可能な条件です。
ヘアマスクは高粘度に仕上げることが多く、ジャー容器を選ぶケースが多くなります。容器形態によって充填工程が変わるため、容器の希望があれば早い段階でお知らせいただくと仕様が固まりやすくなります。
育毛効果をうたうトリートメントは作れますか
化粧品のトリートメントでは育毛・発毛に関する表示はできません。育毛は医薬部外品の承認効能であり、有効成分を配合して品目ごとに承認を受けた製品だけが表示できる範囲です。
育毛剤として企画する場合は、化粧品ヘアケアの100個・最短約1ヶ月という条件は適用されません。承認・許可の工程が入るため、ロットも期間も個別の判断になります。
シャンプーと同じ香りでそろえられますか
同じ賦香で仕上げることは可能です。ライン展開では香りをそろえる企画が多く、シャンプーとトリートメントで共通の香料を使う形が一般的です。
ただし、アウトバスは髪に残す製品のため、時間の経過による香りの立ち方がインバスとは異なります。同じ香料でも体感が変わる場合があるため、賦香率はアウトバス側で調整することになります。

