店頭に並ぶヘアオイルを手に取ると、ボトルの見た目はどれもよく似ています。違いが出るのは中身、つまり配合されている油剤の組み合わせです。ヘアオイルのOEMとは、自社ブランドのヘアオイルの製造をメーカーに委託する仕組みのことで、仕上がりの質感と酸化安定性は原料オイルの選定でほぼ決まります。香りや容器は後から調整できますが、油剤の構成だけは処方設計の最初に決める項目です。なかでもシリコンを入れるかどうかは、質感だけでなくブランドの訴求方針まで動かす分岐です。
この記事の要点
ヘアオイルのOEMは、原料オイルの選定で質感と酸化安定性がほぼ決まります。シリコンの有無が仕上がりの軽さを左右します。
この記事でわかること
- 植物油・エステル油・シリコンという油剤3系統それぞれの役割
- 酸化安定性が脂肪酸の構造で決まる理由と、ホホバオイルが例外である理由
- 主要な植物油の質感と酸化安定性の位置づけ
- ノンシリコンで設計する場合の考え方と、無添加表示で気をつける点
- ヘアオイルで書ける毛髪・頭皮16項目の範囲と、化粧品ヘアケアのロット条件
ヘアオイルのOEMで質感を決めるのは油剤の組み合わせ

ヘアオイルの処方は、単一の油を詰めれば済むものではありません。役割の違う油剤を組み合わせ、その配合比で仕上がりを作ります。
植物油・エステル油・シリコンの3系統
ヘアオイルに使われる油剤は、大きく3つの系統に分かれます。それぞれ担当する役割が違うため、どれか1つだけで完結させる処方はまれです。
| 系統 | 代表的な原料 | 担当する役割 | 質感の傾向 |
|---|---|---|---|
| 植物油 | アルガン油・ホホバ油・椿油・メドウフォーム油 | なじみとコク | 中間〜重め |
| エステル油 | 合成の軽量油剤 | 伸びと軽さ | 軽い |
| シリコン | ジメチコン・シクロペンタシロキサン | すべりとツヤ | 軽い〜非常に軽い |
植物油だけで組むと、なじみは良い一方で伸びが鈍くなりがちです。エステル油を足すと伸びが出て、シリコンを足すと表面のすべりとツヤが加わります。3系統の配合比が、そのまま使用感を決めます。
ヘアオイル・ヘアミルク・ヘアセラム・ヘアミストの違い
アウトバス製品の呼称は複数ありますが、区別しているのは剤形と水分量です。薬機法上、これらの名称を区別する定義はありません。
| 呼称 | 水分の有無 | 質感 | 主な容器 |
|---|---|---|---|
| ヘアオイル | 油剤のみ | ツヤと束感 | 遮光ボトル・スポイト |
| ヘアミルク | 水と油の乳化 | 軽く均一 | ポンプ・チューブ |
| ヘアセラム | 処方により両方 | 高濃度・少量使用 | スポイト・小容量ボトル |
| ヘアミスト | 水分主体 | 最も軽い | スプレー |
油剤のみで組むヘアオイルは、水を含まないため防腐設計の考え方が他と変わります。乳化物であるヘアミルクやヘアミストは水を含むため、別の設計が必要になる構造。同じアウトバスでも、水を入れるかどうかで処方の組み立てが分岐します。
インバスのトリートメントとあわせてライン展開する場合の考え方は、ヘアトリートメントのOEMで整理しています。
原料オイルは質感と酸化安定性の2軸で選ぶ

植物油を選ぶとき、香りや原産地から入ると判断が絞れません。実務では質感と酸化安定性の2軸で候補を並べます。
酸化安定性を分けるのは脂肪酸の構造
植物油の酸化しやすさは、含まれる脂肪酸の種類でおおむね決まります。二重結合の数が多い脂肪酸ほど酸化を受けやすいという関係です。
オレイン酸のように二重結合が1つの脂肪酸を多く含む油は、比較的酸化しにくい性質を持ちます。リノール酸やリノレン酸のように二重結合が2つ以上ある脂肪酸を多く含む油は、酸化が進みやすくなります。
アウトバス製品は髪に残したまま空気に触れ続けるため、この差が製品寿命と使用感の持続に効いてきます。開封後に香りが変わったという声が出やすいのは、この脂肪酸の構成が影響している場合です。
ホホバオイルだけは油ではなく液状ワックス
ホホバオイルは名前にオイルと付きますが、化学構造は他の植物油と異なります。一般的な植物油がトリグリセリドであるのに対し、ホホバはワックスエステルに分類されます。
この構造の違いが酸化安定性に直結します。酸化しやすい部位の構造がそもそも少ないため、長期の安定性を重視する処方で選ばれやすい原料です。軽い質感と両立しやすい点も、アウトバス設計では扱いやすい特徴になります。
主要な植物油の質感と安定性の位置づけ
候補を絞る段階では、次の位置づけを目安にします。実際の質感は精製度や配合比でも変わるため、試作での確認が前提です。
| 原料 | 質感の傾向 | 酸化安定性の傾向 | 向く設計 |
|---|---|---|---|
| ホホバ油 | 軽め・さらり | 高い | 長期安定を重視する処方 |
| メドウフォーム油 | 中間 | 高い | 他の油の安定性を補う用途 |
| アルガン油 | 中間・なじみ良い | 中〜高 | ブランドストーリーを持たせたい場合 |
| 椿油 | やや重め・コクがある | 高い | 和のコンセプト・硬毛向け |
| オリーブ油 | 重め | 中 | しっとり感を強く出したい場合 |
1種類に絞る必要はありません。安定性の高い油をベースに据え、質感やコンセプトを担う油を少量組み合わせるのが一般的です。原産地や希少性をブランドの物語として使う場合も、ベースの安定性は別途確保しておきます。
シリコンを入れるかどうかで設計が変わる

シリコンの配合は、質感だけでなくブランドの訴求方針にも関わる判断です。入れる場合と入れない場合で、設計の考え方が変わります。
揮発性シリコンと非揮発性シリコンの違い
シリコンは大きく2種類に分かれます。塗布後に揮発するものと、髪の表面に残るものです。
シクロペンタシロキサンに代表される揮発性シリコンは、塗布時の伸びを助けたあと揮発します。塗った直後は軽く広がり、乾いた後はべたつきが残りにくい仕上がり。ジメチコンのような非揮発性シリコンは髪に残り、すべりとツヤを持続させます。
軽い仕上がりを狙うなら揮発性を主体に、ツヤの持続を狙うなら非揮発性を組み合わせる。この配分がシリコン設計の中心です。
ノンシリコンで設計する場合
ノンシリコンを選ぶ場合、シリコンが担っていたすべりとツヤを別の原料で置き換えます。エステル油の配合比を上げる、あるいは軽質の植物油を組み合わせるといった方向です。
置き換えによって使用感は変わります。シリコン処方と同じすべりを完全に再現できるわけではないため、ノンシリコンであること自体を訴求の軸に据えるかどうかを先に決めておくと、試作の方向がぶれません。
「無添加」と書くときの表示上の注意
ノンシリコンを訴求する場合、パッケージや広告での書き方に決まりがあります。条件を付けない「無添加」という表示は、何を添加していないのかが不明確なため、景品表示法上のリスクを伴います。
| 表現を避けたい形 | 適切な形 |
|---|---|
| 無添加 | シリコン不使用(不使用の成分を明示する) |
| 完全無添加 | (標榜できない) |
| 100%天然 | 配合成分の○%が植物由来(数値と算定根拠を明示) |
| 無添加だから安心 | (安全性を保証する表現は標榜できない) |
不使用であることと、安全であることは別の事柄です。不使用の事実だけを具体的な成分名とともに書く形にすると、表示上の問題が起きにくくなります。
ヘアオイルで書ける効能表示の範囲

ヘアオイルは化粧品に該当します。そのため、パッケージや広告に書ける効能は化粧品の枠組みで決まります。
化粧品で書けるのは毛髪・頭皮に関する16項目
化粧品が標榜できる効能は、厚生労働省が定める56項目に限られます。このうち毛髪・頭皮に関するものは16項目で、ヘアオイルの訴求はこの範囲から選びます。
ツヤと指通りを訴求する製品では、次の項目が使いやすい表現です。
(9)毛髪のつやを保つ (10)毛髪につやを与える (8)クシどおりをよくする
出典:厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」
このほか「毛髪をしなやかにする」「毛髪の水分、油分を補い保つ」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」も16項目に含まれます。ヘアオイルの一般的な訴求は、この範囲でおおむね表現できます。
配合成分を増やしても書ける効能は増えない
ヘアオイルのOEMでは、話題の成分を配合したいという要望がよく出ます。配合できる成分と、パッケージに書ける効能は別の話です。
化粧品として届け出る限り、書ける効能は16項目の枠内にとどまります。成分を追加しても枠が広がることはありません。「修復する」「髪質を改善する」のように、髪が元の状態に戻る、髪そのものが変わると読める表現は16項目にないため、そのまま使うと医薬品的な効能の標榜と受け取られる余地があります。
「補修」は扱いが分かれます。業界のガイドラインは、頭髪用の化粧品について、補修成分で髪の表面を覆う、傷んだ部分の隙間を埋めるといった物理的な補修の表現を認めています。ヘアオイルなら、油剤が髪の表面をコートして傷んだ部分を補う働きがこれにあたります。補修の働きが事実としてあること、効果が使っている間に限られることが条件です。
| 言いたいこと | 表現を避けたい形 | 書ける形 |
|---|---|---|
| 傷んだ髪をケアする | 傷んだ髪を修復する | 傷んだ髪の表面をコートして補修/毛髪の水分、油分を補い保つ |
| ツヤのある髪に | 髪質を改善する | 毛髪につやを与える |
| 指通りをよくする | 髪の内部から修復する | クシどおりをよくする |
| 広がりを抑える | くせ毛を治す | 毛髪をしなやかにする |
配合成分そのものは全成分表示に記載されます。成分名を出して読者に伝えることと、その成分の働きを効能として断定することの間には線があるという整理です。
なお育毛・発毛に関する表現は、化粧品のヘアオイルでは扱えません。育毛剤は医薬部外品の区分にあたり、承認を受けた品目だけが該当する効能を表示できます。区分の違いは医薬部外品と化粧品の違いで整理しています。
容器・ロットと相談前の準備
処方が決まったら、容器とロットの検討に移ります。ヘアオイルは容器の選択が製品体験に直結する商材です。
遮光とスポイトで変わる容器選び
油剤主体の製品は光の影響を受けます。遮光性のある容器を選ぶか、外箱で光を遮るかを早い段階で決めておきます。
吐出方法も使用感を左右します。スポイトは1回量を細かく調整でき、少量使用の高価格帯製品と相性がよい形態。ポンプは片手で使えるため日常使いの製品に向きます。ミストタイプはスプレーヘッドの選定で噴霧の粒度が変わるため、試作時に確認する項目です。
化粧品区分のヘアケアなら100個程度から
ヘアオイルは化粧品区分のヘアケアに該当します。化粧品区分のヘアケアに限り、100個程度からの相談を受け付けています。この条件であれば、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。
ロット条件はカテゴリごとに異なります。同じタイミングでメイクアップやサプリメントを検討している場合、そちらは1,000個〜が目安になるため、計画を分けて考える必要があります。
| 区分 | 対象 | 最低ロットの目安 | 納期の目安 |
|---|---|---|---|
| 化粧品ヘアケア | ヘアオイル・ヘアミルク・ヘアセラム・ヘアミスト | 100個〜 | 最短約1ヶ月〜 |
| 医薬部外品 | 育毛剤・薬用スカルプ製品等 | 仕様により個別 | 承認・許可工程の分だけ長い |
| 一般OEMロット | メイクアップ・脱毛ワックス・食品系 | 1,000個〜 | 約3ヶ月 |
費用は原料オイルの種類・容器・容量・ロット数の組み合わせで変わります。仕様が固まる前は幅のある概算になるため、条件を整理したうえで個別にお見積もりする流れです。
相談前に決めておく項目
すべてが決まっていなくても相談は始められます。次の項目に見当がついていると、初回のやり取りが具体的になります。
- 狙う質感(軽さ重視か、ツヤとまとまり重視か)
- シリコンの可否(ノンシリコンを訴求に使うかどうか)
- 剤形(オイル・ミルク・セラム・ミストのいずれか)
- 容量と容器の希望(未定なら想定する使用シーンと価格帯)
質感の希望は、言葉より現物で伝わります。参考にしたい市販品があれば提示いただくと、方向性の共有が早くなります。ヘアケア全体の進め方やメーカー選びの観点はヘアサロンのヘアケアOEM、洗浄剤側の選択肢はシャンプーのOEMで選べる範囲で扱っています。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法) | 化粧品・医薬部外品の区分と製造販売の根拠法 |
| 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号) | 化粧品が標榜できる56項目の根拠通知 |
| 医薬品等適正広告基準(薬生発0929第4号) | 効能表現の広告上の適否を判断する基準 |
| 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法) | 品質・取引条件の不当表示に関する規制 |
| 化粧品の表示に関する公正競争規約 | 無添加表示・最大級表現に関する業界自主規約 |
| 化粧品等の適正広告ガイドライン 2020年版(日本化粧品工業連合会) | 頭髪用化粧品の補修表現の範囲(業界の自主基準) |
まとめ
ヘアオイルのOEMは、原料オイルの選定で質感と酸化安定性がほぼ決まります。植物油・エステル油・シリコンの3系統をどう配合するかが設計の中心で、香りや容器は後から調整できる項目です。
植物油を選ぶ際は、質感と酸化安定性の2軸で候補を並べます。二重結合の少ない脂肪酸を多く含む油ほど酸化しにくく、ホホバオイルはワックスエステルという構造の違いから安定性の高い選択肢になります。
書ける効能は化粧品の枠組みで決まり、成分を追加しても16項目の範囲は広がりません。ノンシリコンを訴求する場合は、条件を付けない「無添加」ではなく不使用の成分名を明示する形にします。化粧品区分のヘアケアであれば、100個程度からのご相談が可能です。
よくある質問
ヘアオイルは何個から作れますか
化粧品区分のヘアケアに該当するため、100個程度からのご相談をお受けしています。この条件であれば最短約1ヶ月程度での納品が可能です。
ロット条件は商品カテゴリごとに異なります。同じ社内でメイクアップやサプリメントを検討している場合、そちらは1,000個〜が目安になるため、カテゴリごとに計画を分けて考えると進めやすくなります。
原料オイルは何種類まで配合できますか
種類の上限は仕様によって変わります。実務では、安定性を担うベースの油に、質感やコンセプトを担う油を数種類組み合わせるのが一般的です。
種類を増やすほど良くなるわけではありません。配合比が分散すると、それぞれの特徴が打ち消し合って輪郭のない使用感になることがあります。狙う質感を先に決めてから種類を絞る進め方が結果的に近道です。
ノンシリコンのヘアオイルは作れますか
作れます。シリコンが担っていたすべりとツヤを、エステル油や軽質の植物油で置き換えます。
ただし使用感はシリコン処方と同じにはなりません。ノンシリコンを訴求の軸に据えるかどうかを先に決めておくと、試作の評価基準が定まります。パッケージに書く際は「無添加」ではなく「シリコン不使用」のように、不使用の成分を明示する形にします。
パッケージに髪を補修すると書けますか
補修の働きが事実としてあれば、使っている間の効果として書けます。ヘアオイルなら、油剤が髪の表面をコートして傷んだ部分を補う、という物理的な補修がこれにあたります。業界のガイドラインが、頭髪用の化粧品についてこうした補修の表現を認めているためです。
書けないのは、「傷んだ髪を修復する」「髪が回復する」のように、髪が元の状態へ戻ると読める表現です。一度塗れば補修された状態が続く、と読める書き方も避けます。補修と並べて「毛髪の水分、油分を補い保つ」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」といった16項目の表現も使うと、訴求の幅が広がります。
ヘアミストもヘアオイルと同じ条件で作れますか
どちらも化粧品区分のヘアケアに該当するため、ロットと納期の条件は同じ枠で考えます。ただし処方の設計は別物です。
ヘアミストは水分を主体とする処方のため、油剤のみで組むヘアオイルとは防腐設計の考え方が変わります。容器もスプレーヘッドの選定が加わるため、試作時に噴霧の粒度を確認する工程が入ります。
香りは自由に決められますか
賦香の設計は選択肢の中から選べます。シャンプーやトリートメントとライン展開する場合、共通の香料でそろえる企画が一般的です。
ただしヘアオイルは髪に残す製品のため、時間の経過による香りの立ち方がインバス製品とは異なります。同じ香料を使っても体感が変わるため、賦香率はヘアオイル側で調整することになります。

