指名のお客様に「家でも同じ仕上がりにしたい」と言われても、勤め先の商品しか紹介できない。店を持たない美容師でも、自分の名前のヘアケア商品はOEMで作れます。化粧品区分のヘアケアであれば、メーカーの既存処方と既製の容器を使う前提で、100本程度から相談できます(ブギウギ株式会社の場合)。作れるかどうかより先に決めるのは、どこで売るか。面貸しか、業務委託か、独立前かで、売る場所と先に確かめることが変わります。
この記事の要点
美容師が自分の商品を作るなら、まず働き方で売る場所を決め、持ち運びやすい1品を少ない本数から始めます。
この記事でわかること
- 店を持たない美容師が自分の商品を出せる仕組み
- 面貸し、業務委託、独立前のそれぞれで先に確かめること
- 最初の1品にヘアオイルが向いている理由
- 100本から始めるための条件
- ブランド名と、美容師の肩書きを使うときの注意
美容師の化粧品OEMとは

美容師の化粧品OEMとは、美容師が企画した商品の製造をメーカーに委託し、自分の名前を付けて販売する形のことです。製造と品質の管理は、製造の許可を持つメーカー側の体制で行います。美容師が担うのは、どんな商品にするかの企画と、お客様への販売です。
そのため、店を持たない美容師でも、製造の許可を取らずに自分の商品を出せます。フリーランスで面貸しのサロンを使っている人も、業務委託で働いている人も、独立に向けて準備している人も、出発点は同じです。
OEMという仕組みそのものを確かめたい方は、サロン専売ヘアケアの進め方と費用の記事から読み進めてください。この記事では、店を持たない美容師に固有の論点に絞ります。
美容師が自分の商品を持つ強み

美容師が自分の商品を持つ一番の強みは、施術で使って仕上がりを見てもらえることです。広告で使用感を言葉にするより、目の前の髪で見せる方が伝わります。
施術で使い、仕上がりを鏡で見てもらい、同じ商品を家で使ってもらう。次の来店で感想を聞き、使い方を調整する。この流れが、指名のお客様との関係の中で自然に回ります。勤め先の商品を紹介する場合と違い、自分の名前の商品なら、店を移ってもお客様との接点が途切れません。
ただし、商品を持てば売上が伸びるわけではありません。売上は、施術で使う場面と、紹介する場面をどれだけ作れるかで決まります。その場面がどこにあるかは、次の節の働き方で変わります。
働き方で売り方が変わる

店を持たない美容師が自分の商品を売る場所は、施術の場と、SNSやネットショップの2つです。施術の場で売るときは、場所を借りているサロンや契約先のルールが先に効きます。
面貸しやシェアサロン
面貸しやシェアサロンでは、施術の場は借りている場所です。店に店販の棚があっても、自分の商品を置いて売ってよいかは店のルール次第。置いてよいか、売上をどう扱うか、在庫を店に置けるかを、契約の前か商品を作る前に確かめてください。店で売れない場合も、施術で使って仕上がりを見てもらい、SNSやネットショップで買ってもらう形は取れます。
業務委託
業務委託で働く場合は、サロンとの契約の中に物販の取り決めがあるかを確かめます。店の商品の販売が業務に含まれていると、自分の商品を同じ店で売ることが契約上難しい場合があります。契約で売れない場合は、施術以外の場面、たとえば SNS での発信や、指名のお客様への個別の案内で紹介する形を考えます。
独立前
独立を準備している美容師なら、開業前に商品を作っておくと、開業後の店販の柱になります。勤めているうちは前の2つと同じ確認が要りますが、開業前に指名のお客様で反応を確かめておけば、開業時に何本作るか、どの品目を足すかを判断しやすくなります。
| 働き方 | 先に確かめること | 主な売る場所 |
|---|---|---|
| 面貸しやシェアサロン | 店販の棚の使用、売上の扱い、在庫の置き場 | 施術の場、SNSやネットショップ |
| 業務委託 | 契約での物販の取り決め | 指名のお客様への案内、SNSやネットショップ |
| 独立前 | 勤め先のルール、開業の時期 | 開業前は指名のお客様、開業後は自分の店 |
SNSで発信するときの薬機法とステマ規制の注意点は、インフルエンサーの化粧品OEMの記事で扱っています。
最初の1品は何にするか

最初の1品は、施術で使えて、持ち運びやすく、家でも使い方が分かりやすいものを選びます。店を持たない美容師には、この3つをそろえやすいヘアオイルやアウトバスのトリートメントが始めやすい品目です。
| 品目 | 施術での使いやすさ | 店を持たない美容師との相性 |
|---|---|---|
| ヘアオイル、アウトバスのトリートメント | 仕上げのスタイリングで使い、その場で手触りを見せられる | 小さなボトルで持ち運びやすく、場所を選ばない |
| シャンプーとトリートメント | シャンプー台で使えば仕上がりが伝わる | 2品をそろえる必要があり、使う場所も限られる |
ヘアオイルは、仕上げのブローの後に使い、髪のつやと手触りをその場で見てもらえます。書ける効能は「毛髪につやを与える」「毛髪の水分、油分を補い保つ」といった頭皮と毛髪の16項目の範囲で(化粧品の効能の範囲・厚生労働省)、使用感で特徴を伝える商品と相性がよい品目です。ヘアオイルの原料と質感の選び方は、ヘアオイルのOEMの記事で確かめられます。
シャンプーとトリートメントは、お客様が毎日使うため、使い切って買い足す周期がはっきりしている組み合わせです。面貸しのサロンでシャンプー台を使える環境なら、最初から2品で作る選択も成り立ちます。
店を持たない美容師は100本から始める
店を持たない美容師にとって、在庫の置き場所は最初の制約になります。大量に作れば1本あたりの単価は下がりますが、置く場所も、売り切るまでの期間も読めないまま作ることになります。
ブギウギ株式会社では、スキンケアやヘアケアなどの化粧品区分の商品で、メーカーの既存処方と既製の容器を使う場合に限り、100本程度の極小ロットから相談を受け付けています。この条件の場合、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。処方を一から作る場合や、特注の容器を使う場合は、本数も期間も個別の相談になります。
一般的なOEMでは1,000個以上が目安になることもあります。100本なら、指名のお客様の数と来店の間隔から、売り切るまでの期間を見積もりやすい規模です。個人で小ロットから始める場合の費用の考え方は、個人で小ロットのOEMを始める記事にまとめています。
名前と表示で気をつけること

自分の名前の商品になるので、ブランド名と表示は最初に決めておきます。表のラベルにはブランド名と商品名を、裏のラベルには全成分や内容量といった法定の表示を載せます。
裏のラベルの製造販売元の欄には、製造販売の許可を持つ会社の名前が入ります。OEMで作る場合、許可を持たない美容師の名前がここに入るわけではありません。自分の名前は、表のブランド名や商品名で打ち出します。ブランド名を長く使うつもりなら、商標の登録も早めに確かめておくと安心です。
もう1つ気をつけたいのが、美容師という肩書きの使い方です。医薬関係者や理容師、美容師が推薦し、指導し、選用している旨の広告は、医薬品等適正広告基準で禁じられています(医薬品等適正広告基準・厚生労働省)。自分の商品に美容師の肩書きを添える表現は、パッケージやSNSに載せる前に、メーカーの薬事の確認を通してください。
相談から販売開始までの流れ

既存の処方を使う場合、相談から納品までは、100本なら最短約1ヶ月程度です。その後、施術での使用と販売を始めます。
| 工程 | 決めること |
|---|---|
| 相談 | 働き方、売る場所、作りたい品目を共有する |
| 処方と香りの選定 | 既存の処方から選び、使用感と香りを決める |
| 試作 | 施術で実際に使い、仕上がりと使用感を確かめる |
| 容器とラベル | 容器を選び、表と裏の表示を確定する |
| 製造 | 100本程度から製造する |
| 販売開始 | 施術で使い始め、売る場所に並べる |
相談の前に、働き方と売る場所、最初の1品、ブランド名の候補、何本作りたいかを書き出しておくと話が早く進みます。面貸しや業務委託の場合は、店や契約先のルールを確かめた結果も一緒に伝えてください。
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(e-Gov) | 化粧品の製造販売の許可と、容器への表示の枠組み |
| 医薬品等適正広告基準(厚生労働省) | 医薬関係者や理容師、美容師による推薦等の広告の禁止 |
| 化粧品の効能の範囲の改正について(薬食発0721第1号・厚生労働省) | ヘアケアの化粧品が書ける頭皮と毛髪の効能 |
まとめ
美容師の化粧品OEMは、作れるかどうかより、どこで売るかで組み立てが決まります。面貸しやシェアサロンなら店のルール、業務委託なら契約の取り決めを先に確かめ、独立前なら開業後の店販の柱として準備します。最初の1品は、施術で使えて持ち運びやすいヘアオイルやアウトバスが始めやすく、化粧品区分の商品で既存の処方と既製の容器を使えば100本程度から相談できます。肩書きを使う表現は、載せる前にメーカーの薬事の確認を通してください。
よくある質問
店を持っていない美容師でも作れますか?
作れます。製造と品質の管理は製造の許可を持つメーカー側の体制で行うため、美容師が製造の許可を取る必要はありません。化粧品区分のヘアケアで、メーカーの既存処方と既製の容器を使う場合は、100本程度から相談できます。
面貸しのサロンで自分の商品を売ってもいいですか?
サロンごとのルールによります。店販の棚を使えるか、売上をどう扱うか、在庫を店に置けるかを、商品を作る前に確かめてください。店で売れない場合も、施術で使って仕上がりを見てもらい、SNSやネットショップで購入してもらう形は取れます。
何本から作れますか?
化粧品区分のヘアケアで、メーカーの既存処方と既製の容器を使う場合は、100本程度から相談できます。この条件なら、最短約1ヶ月程度での納品が可能です。処方を一から作る場合や特注の容器を使う場合は、本数も期間も個別の相談になります。
「美容師が開発」と書いてもいいですか?
美容師の肩書きを使った表現には決まりがあります。医薬関係者や理容師、美容師が推薦し、選用している旨の広告は、医薬品等適正広告基準で禁じられています。肩書きを添える表現は、パッケージやSNSに載せる前に、メーカーの薬事の確認を通してください。
独立前に作っておくと何がよいですか?
開業後の店販の柱を、開業前に用意できます。勤めているうちに指名のお客様で反応を確かめておけば、開業時に何本作るか、どの品目を足すかを判断しやすくなります。ただし、勤め先のルールで自分の商品の販売が制限されていないかは、先に確かめてください。

