「薬用」と名の付く商品を自社ブランドで出したい——そう考えて調べ始めると、化粧品とはまったく違う手続きの壁に突き当たります。医薬部外品のOEMとは、薬用化粧品などの処方設計・承認申請・製造までを受託製造会社に委託し、自社ブランドとして販売する仕組みのことです。化粧品が届出だけで発売できるのに対し、医薬部外品は品目ごとに承認を受けなければ発売できません。この違いが、期間とコストの両方を大きく左右します。
この記事の要点
医薬部外品は品目ごとの承認が必要で、期間は選ぶ承認ルートによって変わります。
この記事でわかること
- 医薬部外品の発売までに通る2つの関門の役割
- OEMを使うと許可取得を省ける理由と、その際の立ち位置
- 承認ルートによって期間とコストがどう変わるか
- 企画から発売までの工程と、遅延が起きやすい箇所
- 医薬部外品で標榜できる効能の範囲と広告の制約
医薬部外品OEMとは
医薬部外品は、薬機法上で医薬品と化粧品の中間に位置づけられる区分です。有効成分を配合し、厚生労働省が認めた範囲の効能効果を表示できます。薬用化粧品・薬用石けん・育毛剤・制汗剤などが代表例。
医薬部外品OEMでは、受託製造会社が処方設計から承認申請、製造までを一括して担います。委託者は企画と販売に集中でき、薬機法の手続きに関する専門知識を自社で抱える必要がありません。
化粧品との最大の違いは、発売前の手続きです。化粧品は製造販売届出を提出すれば発売できますが、医薬部外品は品目ごとに承認を取得する必要があります。承認では有効成分の種類と配合量、効能効果の妥当性が審査対象となります。効能表示と手続きの両面での違いは医薬部外品と化粧品の違いで詳しく整理しています。
有効成分という考え方
医薬部外品は、効能効果に寄与する成分を「有効成分」として明示し、その配合量を承認申請で示します。化粧品には存在しない概念です。この有効成分が何であるかによって、後述する承認ルートと期間が決まります。
必要な許可と承認の仕組み

医薬部外品を発売するには、性質の異なる2つの関門を通る必要があります。混同されやすい部分なので、役割を分けて理解しておきます。
| 関門 | 対象 | 与える主体 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 製造販売業許可 | 事業者 | 都道府県 | 市場に出荷する責任を負う資格 |
| 品目ごとの承認 | 商品 | 厚生労働省または都道府県 | 有効成分と効能効果の妥当性を審査 |
製造販売業許可は、商品を市場に出す事業者に対して与えられる資格です。総括製造販売責任者の設置など、体制面の要件を満たす必要があります。加えて、実際に製造する工場には製造業許可が必要です。
OEMで許可取得を省ける理由
ここがOEMを使う実務上の最大の利点です。医薬部外品のOEMでは、受託製造会社が製造販売業許可を持ち、製造販売元となる形が一般的。委託者は販売者としてブランドを冠する立場になります。
この形であれば、委託者側で製造販売業許可を取得する必要がありません。責任技術者の確保や品質管理体制の構築といった負担を負わずに、自社ブランドの薬用化粧品を持てる仕組みです。
一方で、製造販売元は受託先の名義になるため、パッケージの表示や責任の所在が化粧品OEMとは異なります。契約時に、表示上どの名称がどこに入るかを確認しておきます。
承認ルートで変わる期間とコスト
医薬部外品の期間を左右する最大の要素が、どの承認ルートを選ぶかです。ここを理解しないまま計画を立てると、スケジュールが大きく狂います。
| ルート | 内容 | 期間の傾向 |
|---|---|---|
| 承認基準内・既承認処方の活用 | 既に認められた成分構成の範囲で設計する | 比較的短い |
| 承認基準内での独自調整 | 基準の範囲内で配合や処方を調整する | 中程度 |
| 新規有効成分・独自処方 | 前例のない成分や配合を用いる | 長い。1年前後かかる例もある |
受託先が既に承認を得ている処方をベースに、香りや使用感、容器だけを変える方式が最も早いルートです。多くの事業者がこの形から入ります。独自の有効成分で差別化を狙う場合は、承認申請の準備に相応の時間と費用がかかると見込んでおきます。
承認戦略の選択を誤ると、半年規模の遅延と数百万円の追加コストが発生することも珍しくありません。何を独自にして何を既存の枠に乗せるかを、企画の初期段階で受託先と詰めておくことが重要な分岐点になります。
期間を断定しない理由
化粧品OEMであれば納品時期の目安を示せますが、医薬部外品では審査の進行に依存する部分が残ります。同じ内容の申請でも、照会事項への対応回数で期間が変わるためです。発売時期を先に決めて逆算する進め方は、この区分では機能しにくいと考えてください。
企画から発売までの流れ

医薬部外品の商品化は、化粧品より工程が1段階多くなります。承認申請とその審査対応が挟まるためです。
- 企画・コンセプト設計:狙う効能と有効成分の方向性を決める
- 承認ルートの選定:既承認処方を使うか独自処方で進めるかを判断する
- 処方設計・試作:有効成分の配合量を確定し、安定性を確認する
- 承認申請・審査対応:資料を作成して申請し、照会事項に対応する
- 製造・包装・出荷:承認取得後に量産する
3番目の処方設計では、有効成分の配合量が承認の枠内に収まっているかが確認の中心です。使用感を優先して処方を変えた結果、承認の範囲から外れて申請をやり直す事態は避けたいところ。
4番目の審査対応が、期間のぶれが最も大きい工程です。提出資料に不足があると照会事項が繰り返され、そのたびに時間が積み上がります。受託先の申請実績を確認しておくと、ここでの見通しが立てやすくなります。
パッケージデザインは承認取得と並行して進められますが、表示内容の確定は承認後になります。効能効果の文言は承認された範囲でしか書けないためです。
標榜できる効能と広告のルール
医薬部外品の利点は、化粧品では言えない効能を表示できる点にあります。ただし表示できるのは承認された効能に限られます。
代表的な承認効能
| 区分 | 標榜できる効能の例 |
|---|---|
| 薬用化粧品(美白系) | メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ |
| 薬用化粧品(肌荒れ系) | 肌荒れ・あれ性を防ぐ/にきびを防ぐ |
| 薬用石けん | 皮膚の清浄・殺菌・消毒 |
| 育毛剤 | 育毛・養毛/脱毛の予防/ふけ・かゆみを防ぐ |
| 制汗剤 | 汗・わきが・体臭を防ぐ |
注目すべきは、いずれも「防ぐ」という表現である点です。医薬部外品は予防の範囲までが標榜可能であり、既にある状態を治すことはできません。
承認を得ても使えない表現
承認された効能の範囲を超える表現は、医薬部外品でも認められません。
| 使えない表現 | 理由 |
|---|---|
| シミが消える・治る | 治療効果の標榜(承認効能は「防ぐ」まで) |
| 美白する・白くなる | 承認効能は「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」 |
| アンチエイジング・若返り | 承認効能に存在しない |
| 肌の奥まで浸透 | 「角質層まで」の明示が必要 |
| 安全・無害・副作用なし | 安全性を保証する表現の禁止 |
「医薬部外品だから何を書いてもよい」という誤解が現場では起こりがちです。承認されたのは特定の効能であり、その文言の範囲内で表現する原則は変わりません。
医薬品等の広告を行う者は、医薬品等の本質にかんがみ、その広告の適正を図るため、承認等を受けた効能効果等の範囲をこえないものとする
出典:厚生労働省
本記事の根拠法令・出典
| 法令・公的資料 | 位置づけ |
|---|---|
| 医薬品等の規制(厚生労働省) | 製造販売業許可・品目承認の枠組みを定める |
| 医薬品等の広告規制について(厚生労働省) | 承認された効能効果の範囲を超える広告を禁止する |
| 医薬品等適正広告基準(厚生労働省) | 広告表現の具体的な判断基準を示す |
| 化粧品等の適正広告ガイドライン(日本化粧品工業連合会) | 業界団体による表現の運用指針 |
まとめ
医薬部外品のOEMは、製造販売業許可と品目ごとの承認という2つの関門を理解するところから始まります。OEMでは受託先が製造販売元となる形が一般的で、委託者側で許可を取得せずに自社ブランドの薬用化粧品を持てる点が実務上の利点です。
期間を決めるのは承認ルートの選択です。受託先の既承認処方をベースにすれば比較的短く進む一方、新規の有効成分を使う独自処方では1年前後かかる例もあります。化粧品のように納品時期を断定できない区分であることを、計画段階で織り込んでおいてください。
広告面では、承認された効能の文言の範囲内でしか表現できません。「防ぐ」までが標榜可能な範囲であり、「治る」「消える」といった治療効果の表現は医薬部外品でも使えない点は変わらないと理解しておきます。
よくある質問
医薬部外品を作るのに自社で許可は必要ですか?
OEMを利用する場合、受託製造会社が製造販売業許可を持ち製造販売元となる形が一般的なため、委託者側で許可を取得せずに進められます。自社で製造販売元となる場合は、都道府県から製造販売業許可を受け、総括製造販売責任者を設置するなどの体制要件を満たす必要があります。
発売までどのくらいの期間がかかりますか?
選ぶ承認ルートによって大きく変わるため、一律の目安は示せません。受託先の既承認処方をベースに香りや容器を変える方式であれば比較的短く進みますが、新規の有効成分を用いる独自処方では申請準備と審査に1年前後かかる例もあります。照会事項への対応回数によっても前後します。
化粧品と医薬部外品はどちらで作るべきですか?
標榜したい効能で決まります。「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」のように化粧品では言えない効能が必要なら医薬部外品、それ以外なら化粧品で足りるケースが多くあります。医薬部外品は承認の手間と期間が加わるため、必要性を見極めてから選ぶ判断が現実的です。
ロットはどのくらいから相談できますか?
商材や仕様によって異なります。ブギウギ株式会社では医薬部外品について1,000個からのご相談を承っています。なお極小ロットでの対応は化粧品OEMに限定した条件であり、医薬部外品には適用されません。化粧品OEMで小ロットから検討する場合はクリニック専売コスメのOEMも参考になります。ロット数が未定の段階でもご相談いただけます。
独自の有効成分を使うことはできますか?
可能ですが、前例のない成分では承認申請の準備に相応の時間と費用がかかります。安全性と有効性を示す資料の作成が必要になるためです。差別化を有効成分で行うのか、使用感や香り、ブランド設計で行うのかを、企画の初期段階で判断しておくとスケジュールが安定します。
パッケージに「薬用」と書けますか?
医薬部外品として承認を受けた商品であれば表示できます。承認されていない化粧品に「薬用」と表示することはできません。あわせて、効能効果の文言は承認された範囲でしか書けないため、パッケージの表示内容を確定できるのは承認取得後になります。

