ジムやスタジオの会員に自社ブランドのプロテインを届けたい——そう考えたとき、最初に直面するのが「ロットの単位が個数ではなく重量で示される」という業界特有の慣習です。プロテインのOEMとは、原料パウダーの配合設計からフレーバー調整、充填・包装までを受託製造会社に委託し、自社ブランドとして販売する仕組みを指します。既存の原料ベースを使って内容量とパッケージをブランド仕様に整える方式なら、ゼロから処方を組むより現実的に立ち上げられます。

この記事の要点

プロテインOEMは原料タイプの選択で味とコストが決まり、期間は約3ヶ月が目安です。

この記事でわかること

  • ホエイ・ソイなど原料タイプごとの違いとコスト差
  • 重量と個数の2通りで示される最低ロットの読み方
  • 内容量別の費用相場と、見積もりに含まれる項目
  • 溶けやすさとフレーバーを設計するときの判断軸
  • 一般食品として売る場合に使えない訴求表現

プロテインOEMとは

プロテインOEMとは、委託者のブランド名でプロテインパウダーを製造してもらう受託製造の形態です。受託側が原料調達・配合・フレーバー設計・充填を担当し、委託者は企画と販売に専念できます。

プロテインは薬機法上の医薬品ではなく、食品に分類されます。この区分が、後述する広告表現のすべての前提です。製造には食品衛生法に基づく営業許可が必要で、粉末の充填設備を自社で持つかどうかは受託先によって異なります。

ベース処方型とフルオーダー型

受託の方式は大きく2つに分かれます。既存のベース処方にフレーバーと内容量を合わせる方式なら、開発期間を短縮しコストも抑えられる点が利点。原料構成から独自に設計するフルオーダー型は自由度が高い反面、試作回数と最低ロットの両方が増えます。

初回はベース処方型で立ち上げ、売れ行きを見てから独自処方に移行する事業者が多い状況です。

原料タイプの種類と選び方

原料タイプの種類と選び方|図解

プロテインの設計は原料タイプを決めるところから始まります。原料によって味・溶けやすさ・価格が変わり、商品コンセプトを大きく左右します。

原料タイプ原料コスト特徴向いている商品
ホエイ(WPC)標準的乳由来。溶けやすく味を作りやすい定番のトレーニング向け商品
ホエイ(WPI)高い乳糖を減らした精製タイプ乳糖が気になる方向けの商品
ソイ(大豆)抑えやすい植物性。粉っぽさが出やすい植物性を訴求する商品
カゼインやや高い乳由来。水分を含むと粘度が出る就寝前の摂取を想定した商品
エンドウやや高い植物性。独特の風味があるヴィーガン対応商品

ホエイは乳由来のため、アレルゲン表示で「乳成分」の記載が必要になります。植物性を選ぶ場合も、大豆は特定原材料に準ずるものとして表示が推奨される品目。原料の選択がそのままラベルの表示義務に直結するという関係を、企画段階で押さえておきます。

内容量の決め方

内容量は1kg前後が定番ですが、初回は500g前後の小容量から始める選択肢もあります。単価が下がって手に取りやすくなるうえ、在庫リスクも抑えられるためです。ジムの店頭販売なら、持ち帰りやすいサイズという観点も加わります。ジムで販売する数量に迷うときは、会員数から在庫量を見積もる考え方を参考にすると絞り込みやすくなります。

原材料の配合設計とコストの考え方

原材料の配合設計とコストの考え方|図解

主原料(プロテインの種類)を決めたら、次に効いてくるのが副原料の配合と原料の等級です。同じ「ホエイのチョコ味」でも、ここの設計で原価・味・栄養成分の表示が変わります。

副原料の役割

プロテインは主原料のタンパク質だけでなく、味と品質を整える副原料で構成されます。

副原料の種類役割
甘味料甘さの設計(砂糖・高甘味度甘味料・希少糖などで印象とコストが変わる)
フレーバー・酸味料味の方向づけと、原料由来のクセのマスキング
増粘剤・乳化剤とろみや分散性、溶けやすさの調整
ビタミン・ミネラル類栄養設計と差別化(配合により表示や原価が変わる)
機能性原料食物繊維・クレアチン・HMBなど付加価値を持たせる原料

副原料は商品の個性と原価を同時に動かします。差別化のために原料を足すほど原価は上がるため、狙う小売価格から逆算して配合を決めます。

原料の等級と原価率

同じホエイでも、精製度(等級)によってタンパク質含有率と原価が変わります。

主原料の等級精製度タンパク質含有率の目安原価
WPC(濃縮)標準約70〜80%抑えやすい
WPI(分離)高い(乳糖を減らした精製)約90%上がる
WPH(加水分解)最も高い(酵素で部分分解)高い(基原料による)さらに上がる

原価率は主原料の等級と副原料の配合でおおむね決まるため、「どの等級の主原料に、どこまで副原料を足すか」を最初に設計すると、想定した粗利を確保しやすくなります。

摂取シーンから商品を設計する

「いつ飲む商品か」を先に決めると、主原料と剤形が絞りやすくなります。狙う摂取シーンをコンセプトの起点にすると、原料選びからパッケージのメッセージまで一貫します。

摂取シーン相性の良い主原料コンセプト例
トレーニング後ホエイ運動をする方の栄養補給に
就寝前カゼイン就寝前の一杯に
朝食の置き換え・間食植物性・食物繊維を配合忙しい朝や間食の補給に

なお身体の機能に働きかける表現は食品では使えないため、シーンの提案は「運動をする方に」「就寝前に」といった生活シーンの範囲にとどめます。

ロット・費用・納期の目安

プロテインOEMのロットは、重量で示される場合と個数で示される場合があります。この読み替えができないと、見積もりの比較ができません。

表記目安個数への換算例
重量ベース100kg〜(一般的には500kg〜)500gの袋なら200〜1,000個相当
個数ベース1,000個前後〜500g×1,000個=500kg

費用の目安は内容量とロット数で変わります。500gのパウダーを小ロットで試作・生産する規模で100〜200万円程度、1,000個規模になると200〜500万円程度が一つの水準とされています。

見積もりに含まれるのは、原料費・フレーバー調整費・充填加工費・パッケージ資材費・試作費の5項目が基本。アルミ袋にオリジナル印刷を入れる場合は版代が別途かかります。

ロットと納期の考え方

化粧品以外のOEM商材は、一般に1,000個前後からの受注が中心です。ブギウギ株式会社でも、プロテイン・健康食品については1,000個からのご相談を承っており、期間は打ち合わせから納品まで約3ヶ月が目安となります。なお100個程度の極小ロット対応は化粧品OEMに限定した条件であり、プロテインには適用されません。サプリメントなど他の健康食品OEMの費用相場や剤形ごとの考え方は、サプリメントをOEMで作る流れと費用相場で整理しています。

業界全体で見ると、試作から納品まで2〜4ヶ月を要するケースが一般的です。フレーバーの調整に時間をかけるほど後工程が押すため、試作のスケジュールには余裕を持たせます。

フレーバーと溶けやすさの設計

フレーバーと溶けやすさの設計|プロテイン OEM

プロテインの評価を分けるのは、成分表よりも飲んだときの印象です。継続購入につながるかどうかは、味と溶けやすさでほぼ決まります。

フレーバー設計で調整するのは次の4点です。

  1. 甘味の強さ:甘味料の種類と量を決める
  2. 香りの方向性:ココア系・ミルク系・フルーツ系から選ぶ
  3. 粉っぽさ:原料タイプと粒度で調整する
  4. 溶解性:レシチンなどの分散剤で溶けやすさを高める

ソイやエンドウなど植物性の原料は、ホエイに比べて粉っぽさが出やすい傾向があります。ココア系のフレーバーは風味が強く、原料由来のクセを覆いやすいため、植物性プロテインの定番として選ばれてきました。

試作は必ずシェイカーで実際に振って確認してください。水で溶かした場合と牛乳で溶かした場合で印象が変わるため、想定する飲み方の両方で試すことが欠かせません。ダマの残りやすさは粒度と分散剤で調整できます。

OEMで選べるフレーバーの例

OEMで選べるフレーバーの例|図解

プロテインOEMのフレーバーは、処方が完成している定番から選ぶ方法と、希望の味をオーダーで再現する方法があります。定番は追加の風味開発が不要で小ロットでも取り入れやすく、その他の味は再現に風味開発や最低ロットの引き上げがかかる場合があります。

ポイントは、原料タイプによって作りやすい(=定番として用意されやすい)味が変わることです。

原料タイプ相性の良い定番フレーバーの例
ホエイ(WPC)チョコレート・ココア・バニラ・キャラメル・カフェオレ・ストロベリー・バナナ・抹茶・ヨーグルト など幅広い
ホエイ(WPI)ココア・チョコレート・バニラ・ストロベリー・バナナ・抹茶・ヨーグルト
ソイ(大豆)黒糖きなこ・ココア・バナナ など、原料のクセをマスキングしやすい濃いめの味

これらは処方が固まっている「一般的な味」で、味の再開発なしに選べます。植物性のソイは独特の風味が出やすいため、ココアや黒糖きなこのように香りの強い味と合わせると飲みやすく仕上がります。

上記以外の味も「再現可能な味」としてオーダーできるケースがあります。対応できる幅は広く、たとえば次のようなフレーバーが挙げられます。

ジャンル再現可能なフレーバーの例
フルーツ系アップル・マスカット・マンゴー・ブルーベリー・ライチ・グレープ・パイナップル・みかん・レモン 等
和素材・スイーツ系きなこ・おしるこ・焼き芋・栗・練乳・プリン・チーズケーキ 等
ドリンク系ミルクティー・フルーツオレ・ラムネ・エナジードリンク系 等
変わり種コーンポタージュ・パンプキン など、リストにない味も相談可

ただし定番外の味は風味開発が入るぶん、最低ロットが大きくなったり単価が上がったりしやすい点に注意します。まず世界観に合う味を1〜2種に絞って始め、反応を見て広げると、在庫と開発コストの両面で無理がありません。

表示と広告で使える表現・使えない表現

プロテインは食品であり、医薬品ではありません。そのため身体の機能に働きかける表現は使えず、一般食品として販売する場合の訴求範囲はかなり限定されます。

一般食品として販売する場合

言えるのは栄養補給に関する事実までです。健康増進法第65条は、健康保持増進効果について著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示を禁じています。

食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果等について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

出典:消費者庁

プロテインで誤りやすいのは、筋肉に関する訴求です。

使える表現使えない表現
タンパク質補給筋肉がつく
運動をする方に筋肥大・筋肉増強
トレーニング後の栄養補給に回復を早める
食事で不足しがちなタンパク質を補うパフォーマンスが上がる

タンパク質そのものは栄養機能食品の対象成分に含まれていません。「筋肉の維持に役立つ」といった機能性の表示を行うには、機能性表示食品として科学的根拠を消費者庁に届け出る必要があります。

義務表示の項目

食品表示法により、名称・原材料名・添加物・内容量・賞味期限・保存方法・製造者の表示が義務づけられています。栄養成分表示も必要で、たんぱく質の含有量は購入判断に直結する項目です。

アレルゲン表示では、ホエイやカゼインを使う場合の「乳成分」の記載が中心。大豆由来を使う場合も表示が推奨されます。

本記事の根拠法令・出典

法令・公的資料位置づけ
食品表示法(消費者庁)原材料名・アレルゲン・栄養成分などの義務表示を定める
健康増進法(消費者庁・虚偽誇大広告)健康保持増進効果に関する虚偽・誇大表示を禁止する
機能性表示食品制度(消費者庁)機能性を表示する場合の届出要件を定める
食品の安全に関する情報(厚生労働省)食品衛生法に基づく製造・営業許可の枠組み

まとめ

プロテインのOEMは、原料タイプを決め、内容量とロットを設計し、フレーバーを詰めるという順序で進みます。原料の選択が味・コスト・アレルゲン表示のすべてに波及するため、ここを最初に固めることが手戻りを防ぐ近道です。

ロットは重量と個数の2通りで示されるため、500g×1,000個=500kgのように換算して比較してください。費用は500g×1,000個規模で200〜500万円程度、期間は約3ヶ月が目安となります。

広告表現では、一般食品として販売する限り筋肉に関する訴求ができません。「タンパク質補給」「運動をする方に」といった範囲にとどめ、それ以上の訴求が必要なら機能性表示食品の届出を検討することになります。

よくある質問

プロテインのOEMは何個から作れますか?

重量で示される場合は100kg程度から受け付ける会社もありますが、一般的には500kg前後が下限です。個数に換算すると500gの袋で1,000個相当。ブギウギ株式会社ではプロテイン・健康食品について1,000個からのご相談を承っています。ロット数が未定の段階でもご相談いただけます。

費用の目安を教えてください

500gのパウダーを小ロットで生産する規模で100〜200万円程度、1,000個規模で200〜500万円程度が一つの水準です。原料タイプによって差が大きく、精製度の高いWPIを選ぶと原料費が上がります。パッケージにオリジナル印刷を入れる場合は版代が加わります。

ホエイとソイはどちらを選ぶべきですか?

商品コンセプトと想定顧客で決めます。ホエイは溶けやすく味を作りやすいため定番商品に向き、ソイは原料コストを抑えやすく植物性の訴求ができます。ホエイは乳成分のアレルゲン表示が必要になる点も判断材料です。

納品までどのくらいかかりますか?

打ち合わせから納品まで約3ヶ月が目安で、業界全体では試作から2〜4ヶ月を要するケースが一般的です。フレーバーの調整に試作を重ねるほど期間は延びます。パッケージの印刷と原料の調達を並行して進めると短縮できます。

「筋肉がつく」とパッケージに書けますか?

一般食品として販売する場合は使えません。タンパク質は栄養機能食品の対象成分ではなく、筋肉に関する機能性を表示するには機能性表示食品として届け出る必要があります。届出のない商品では「タンパク質補給」「運動をする方に」といった表現にとどめます。

少量でテスト販売する方法はありますか?

既存のベース処方を使い、フレーバーと内容量、パッケージだけをブランド仕様に整える方式なら、開発費と最低ロットの両方を抑えられます。内容量を500g前後の小容量に設定すると1個あたりの単価も下がり、店頭で手に取ってもらいやすくなります。